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▼里山ホリディのすすめ

 

 

(社)大阪自然環境保全協会・里山委員会 木下陸男

 

里山とは、一般に市街地や集落周辺の丘陵地や低山帯を指し、そこに広く分布する農用林や薪炭林など、農耕文化(稲作農耕)と深くかかわってきた二次林や草地などのことを言います。
里山はブナの原生林や高山の自然などと異なり、我が国に農耕文化が伝えられてより以来、近年までずっと人手が加わり続けた活用林野でした。したがってその態様は人々の歴史とともに変遷しつつ、それぞれの地域において、自然と人間が織り成す独特の風土、景観をつくり上げています。
一方、キツネやタヌキ、ノウサギといった物語やおとぎ話に登場するお馴染みの動物たちをはじめ、カエルやタニシ、トンボやホタル、カブトムシなどの身近な生き物は、水田やため池、水路や河川、そして集落近くの雑木林に多く生息しています。このように、大阪をはじめ日本の自然の多くは、過去の人間とのかかわりの中でその地の気侯風土や農業的土地利用に適応した複雑な生物相を育んできました。
高度経済成長政策の推進と経済効率優先の日本経済の中で、都市の急速な膨張などによって最も速やかに、かつ徹底的に破壊されてきたのがこの都市近郊の自然でした。

 

私たちの里山保全運動は、サル、シカ、キツネ、タヌキ、テン、リスなどの野生動物保護から始まりました。すなわち、野生動物を保護するには、その生息場所である都市近郊(集落周辺)の雑木林などの自然を保全することが第一であると考えたのです。
1983年私たちは、今までさして重要視されなかったこの二次的自然を“故郷の野山”につながる言葉として「里山」と呼び、身近な生物生態系の保全を前提とした「里山の保全と活用」を提唱、その普及と啓発活動に取り組んできました。
この提案は現在、自然保護運動における新しい展開として、都市近郊の“みどり”の保全ばかりではなく、都市における自然復元運動や各地の「まちづくり」「むらおこし」運動などとしても大きな広がりを見せています。
さらに「故郷の野山=里山」の活用は、高齢化社会を迎えての健康維持や生きがい、青少年の

 

 

 

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