
JTERC 運輸経済研究センター 1997.7 NO.27
研究調査報告書要旨
鉄道運送事業の運賃・料金制度と鉄道整備に関する調査研究
1. 本調査研究に至る経緯等
旅客運賃の設定方式については、平成7年1月、当センターに「旅客運賃問題研究会」を設置し、鉄道、航空、バス、タクシー、旅客船等各モードの旅客運賃のあり方について広範な議論を行った。その結果、同研究会は、平成7年8月、各交通機関毎にそれぞれの事業特性に応じた検討と具体的な改善の実施が望まれるとし、旅客鉄道運賃については、さらに具体的かつ実務的な作業の必要性を指摘した。
そこで、同研究会の学識経験者、マスコミ関係者のメンバーに加え、鉄道事業者、利用者団体等を新たなメンバーとする「旅客鉄道運賃ワーキンググループ」を設置し、具体的データを踏まえつつ検討作業を行うとともに、行政改革委員会の意見等を踏まえ、平成8年2月に報告書をとりまとめた。その内容は、(1)総括原価方式が適当であり、プライスキャップ制、いわゆる上限価格制については、未解決の問題があるため、今後の鉄道事業環境の変化等を勘案しつつ、引き続き検討が必要、(2)総括原価方式を維持するとしても、現在の制度には種々の問題点があり、利用者利益の増進、経営の効率化の促進、事業者の自主性の確保、透明性の向上と規制コストの軽減の観点から、1)総括原価方式の下での上限価格制の導入、2)ヤードスティック方式の強化、3)原価計算方式の改善、4)手続きの簡素化等、5)情報公開の促進、の5点について改善が必要とするものであった。
平成7年度までの経緯は以上のとおりであり、これらの課題に対する改善策を具体化するため、本調査研究を実施した。以下は、その具体案の概要である。
2. 鉄道旅客運賃に関する改善策(具体案)
(1)総括原価方式の下での上限価格制の導入
認可された上限運賃の範囲内であれば、報告により運賃の設定・変更ができる制度を導入し、事業者の自主性を拡大するとともに規制コストの縮小を図る。
?@収支均衡の考え方:
上限運賃は、上限運賃による総収入が総括原価を超えることがないことを確認する。
?A上限価格の対象となる運賃:
普通運賃及び定期運賃
?B実際に設定される運賃:
認可を受けた上限運賃の範囲内であれば、報告により設定・変更が行われる。
?C下限の運賃の設定:
下限の運賃は原則として設定しない。
?D相互格差の制限:
上限価格の範囲内で、路線別、区間別の設定・変更を行う場合については、運賃相互間の格差を2割以内とする。
(2)ヤードスティック方式の強化
経営の効率度合いを他社と比較し査定することとし、従来の大手私鉄に加え、JR旅客会社及び地下鉄事業者へ拡大する。
?@比較方法の精緻化:
ヤードスティックによる比較をより精緻なものとするため、人件費、経費のいずれについても、線路費、電路費、車両費、列車運転費、駅務費の5費目に分け、基準コストを算出する。
?Aヤードスティック方式の適用の改善:
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