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JTERC 運輸経済研究センター 1997.4 NO.20
研究調査報告書要旨

 

小型船舶に係る製造物責任紛争処理に関する調査研究

 

本調査は、製造物責任法(PL法)の公布・施行にともない、不特定多数の一般消費者向けのプレジャーボート等の小型船舶に関する裁判外紛争処理体制について検討を実施したものである。
平成8年度においては、7年度の調査(当センター研究調査報告書要旨No.11)に引き続き、1)他製品分野における裁判外紛争処理機関の詳細調査、2)無動力小型船舶の事故事例調査、3)試行的PL相談室開設による相談への対応、処理方法の実地検証、を行い、これらの調査から得られた知見から、4)7年度に策定した暫定試案を見直し、公正な処理・誠意ある対応・事実の確認・秘密の保持という基本理念の下に小型船舶の裁判外紛争処理体制のあり方を示した。

 

1. 他製品分野における裁判外紛争処理機関の詳細

 

7年度においても個別製品分野別紛争処理機関、製品横断型紛争処理機関について調査したが、本年度は主として機械器具類を取り扱っている民間の製品分野別紛争処理機関について具体的相談業務の方法や運営方法、問題点などについてより詳細な調査を行った。対象は(財)自動車製造物責任相談センター、家電製品PLセンター(設置母体(財)家電製品協会)、ガス石油機器PLセンター(設置母体(社)日本ガス石油機器工業会)、住宅部品PLセンター((財)ベターリビング内)であり、組織構成、実績、処理方法を取りまとめた。また、製品横断的裁判外紛争処理機関として行政が実施している消費生活センター、国民生活センターについても調査を行った。これらから得た知見を整理すると次の通りである。

 

1)相談業務について
相談員は技術、法規について専門的知識を持つとともに、相談を行う者として当事者の主張や論点を整理する能力を有する者で、専属の職員が望ましい。派遣職員による場合は公正中立性について留意する必要がある。また全ての専門分野について相談員をおけない場合は、外部の技術専門家の助言を依頼する方法も考えられる。
相対交渉は当事者双方の話し合いが基本であるが、公正・中立な第三者の介在により円滑な解決を図るものであり、これによる解決がもっとも望ましい。相談員は事案に対する評価・判定は行わず、双方の意見を聴取し、争点整理の上交渉の促進を図る。即ち、相談員は当事者双方への中立的な場の提供、企業に比べ知識・交渉力に劣る消費者の論点や主張の整理と交渉に際しての助言、交渉の促進が役割である。
相談員の行う斡旋は、相対交渉による解決が困難であり、当事者双方が合意した場合に行う。斡旋は迅速に行い、斡旋案は弁護士と相談の上作成する。当事者双方が斡旋案に合意した場合は文書で提示する。相談員の行う斡旋の場合、斡旋料は無料である。
裁定は学識経験者、法律・技術専門家、消費者・製造業界代表等で構成される裁定委員会が行う。裁定結果に拘束力はないが、裁定委員長はその受諾を勧告でき、また当事者双方は裁定案を尊重しなければならない。

 

 

 

 

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