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 この他海洋汚染の監視や海洋開発や利用に関連した観測も広く実施されている。このような調査・観測を通して、大量の海洋データ・情報が生産されている。
 変動する海洋に関連するデータは、厳密な意味において再観測することはできず、気候変動の解明のような研究においては特に、長期にわたるデータの集積が必要である。このような観点では、直接の観測目的に応じたデータの一次利用のみに止まらず、そのデータを集積・管理して、二次的三次的な利用を可能とすることが重要である。このことはデータの取得に莫大な労力や経費がかかる海洋調査においては特に強調されるべきであろう。しかし、例えば地方白治体や企業が環境アセスメントに関わる調査等で得たデータや研究者が個々の研究のために取得したデータ等は、一次利用の目的を果たした後、別の目的で二次利用されるケースは必ずしも多くはない。また、多様な目的による種々の機関で観測されたデータは、観測精度や記録ミスや記録の欠落等その品質がまちまちであって、二次利用のためには収集されたデータについて、その品質をチェックして可能な限りのデータの修復を図るとともに、その品質の度合を示すフラッグを付していくことが必要である。しかし、この作業には多大な労力と費用を要するだけでなく、高度の熟練と専門的知識が要求される。
 広域にわたる長期の海洋データ・情報の収集はひとつの国が行いうるものではなく、国際的な取り組みが要求され、さらにはデータの品質管理においても、国際的な比較検討が不可欠となる。特に地球環境の長期変動の予測を目的とした「TOGA(熱帯海洋及び全球大気研究計画)」、「WOCE(世界海洋循環実験)」等のプロジェクトにおいては、広域・高密度・高品質のデータセットを得るために、データの収集・品質管理・加工に関する特別な委員会や組織を導入している。このような動きのひとつとして、政府間海洋学委員会(IOC)の推進する「IODE(国際海洋データ・情報交換システム)」に対する各国の国立海洋データセンターの積極的な貢献が求められている。また、今後10年程度をめどに全世界の海洋を効率よく監視するシステムの確立を目指した「GOOS(全世界海洋観測システム)」計画が進められているが、その中では、各種海洋データのオンライン流通、高いレベルの品質管理が計画されている。
 このような背景のもとにおいて、我が国の国立海洋データセンターであるJODCのさらなる拡充を図る必要がある。しかし、高度の品質管理や多様化するニーズに対応したデータの加工や配布についてはJODCの業務範囲を越える多くの作業や研究を要するため、これを担当しえるような組織の新設が望まれる。

 

 

 

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