潮汐
外海に生じた潮汐は潮浸として諸水道を通って内海に波及し、瀬戸内海における潮汐を起こす。そしてこれらの諸水道中、友ヶ島水道と豊後水道とは他の水道に比べて大きいので、瀬戸内海における潮汐は主としてこれらの両水道からはいる潮浸に支配される。
友ヶ島水道からはいった潮浸は大阪湾にはいり、明石海峡を通過して備讃瀬戸に至る。また、豊後水道から瀬戸内海に進入する潮浸は2派に分かれ、一つは周防灘を西進して関門海峡に至り、他は東進して伊予灘、安芸灘東部、備後灘及び燧灘を通過して備讃瀬戸に至り、友ヶ島水道から進入して西進する潮浸と相会する。また、潮浸の一部は大畠瀬戸、諸島水道等を通って広島湾に進入する。
瀬戸内海には著しい日潮不等の起こる所があり、各所で潮汐の性質を異にする。一般に備讃瀬戸以西は潮差が大きく日潮不等は比較的小、以東は潮差が小さく日潮不等は非常に大である。特に明石海峡付近において日潮不等は最も大きく、その付近においては毎月の過半数は1日1回潮となる。
潮流
友ヶ島水道では、北流は低潮の約3時間40分後から高潮の約3時間40分後まで流れ、明石海峡では、西流は低潮約3時間後から高潮約3時間後まで流れる。さらに、これから播%灘を西に行くに従い、高・低潮時から転流時までの時間はしだいに短縮し、播%灘の中央部においては、ほぼ高・低潮時に転流する。さらに、西進して備讃瀬戸東部にはいると低潮約1時間前から高潮約1時間前まで西流する。このように高・低潮時から転流時までの時間は各地で異なるが、友ヶ島水道から明石海峡を通って備讃瀬戸までは、ほとんど同一時刻に転流する。すなわち、高松の低潮約45分前から高潮約45分前までは西に向かって流れ、他の約6時間は東へ向かって流れる。
鳴門海峡では、紀伊水道側の高潮のころに北流最強となり、低潮のころに南流最強となる。
備後難及び燧灘は、友ヶ島水道及び豊後水道から来る潮流が相会し、また、東西に分流する区域で、会合点及び分流点は高・低潮時からの時間によって絶えず変化する。
瀬戸内海の各所における毎日の午前と午後の潮流には著しい不等がある。潮流の毎日不等は潮汐の不等の大きい時に著しい。また、一般に潮流の毎日不等は潮汐と同様に瀬戸内海の東部において大で、備讃瀬戸以西においては比較的小さい。ただし、潮流の毎日不等は潮汐の毎日不等すなわち日潮不等に比べて一般に小さく、潮汐では明石海峡などは1日に1回の高潮と1回の低潮となることが多いのにかかわらず、潮流は常に1日2回の東流と2回の西流とがあり、1日に各1回の東西流を見ることはむしろまれです。