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孫は私の生き甲斐

松本敦子
大阪府
昭和十九年二月に長女淳子が韓国のソウル(京城)でうまれました。一ヵ月早く生まれ、未熟児で保育器で育てられました。病院の先生が、「この赤ちゃんは聴力が弱いかもしれない」と言われました。私は信じられませんでした。
戦時中はソウルの両親のそばで、のんびり過ごしていました。ハイハイのころにレコードを聞かせ回っているレコードを見て手をたたいて喜んでいます。でも蓋をしてしまえば音楽が鳴っていても知らん顔をしているのです。「おかしい」と思いました。また、私を捜してトイレの戸を叩いている淳子に、「淳子、淳子」と言っても振り向かず、向こうを向いたまま泣いている。そんなわが子を見たときには、「やっぱり聞こえないのだ」と奈落の底へ突き落とされてしまいました。「どうしよう、どうしたらいいの」と子供を抱いて泣きました。

 

 

 

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