
愛は深く逞し
希望の光りを見詰めて
上江喜佐子
鹿児島県
動き出したタクシーの窓から、主人に向かって嬉しそうな顔で無心に手を振る長男は、まるで、どこかの幼稚園にでも行くような感じ。その様子を見て、息が詰まり、悲しくて悲しくて涙を止めることができませんでした。鹿児島市内のろう学校の寮に入れるための朝のことです。
近所のお子たちと同じように、普通の学校へ入学できない淋しさや、それまでの諸々の思いがなお一層悲しさを誘い頭の中は錯綜し、沈んだ気持ちでいる間に、いつしかろう学校に着いていました。長男を語るとき、もう二十六、七年も前の功なく遣る瀬ない思い出のこの場面が、今でも鮮
前ページ 目次へ 次ページ
|

|