献体20年
宮崎医科大学 本学の献体始め:本学は昭和49年に創立され、昨年(平成7年)20周年を迎えた。献体者の会『白菊会』は開学に先んじて昭和49年2月に創立された。爾来、白菊会事務局は解剖学第一講座に置かれ、献体業務に関する事務が行なわれてきた。 献体の推移:開学当初は、白菊会の会員数が少なかったため、会員外の献体が多かった。その後、会員や職員の地道な努力により、会員数は順調に増え続けた。現在では、白菊会会員の献体率が100%となり、会員数1,568名、生存会員数約967名に達している。最近数年間、会員数増加は70〜90名/年で推移し、献体実数は平均35体/年である。本学の人体解剖実習は、学生数3〜4名に一体で行なわれるため、現在の状況は丁度良いのではないかと考えられる。 解剖実習と御遺骨返還および慰霊祭(追悼式):平成5年度までは、御遺骨の返還は7月中旬から8月中旬にかけて行なわれ、慰霊祭は10月の第3水曜日に行なわれてきた。しかし、平成6年のカリキュラム改変に伴い、解剖実習は後期(10月初旬より次年度の2月初旬)、遺骨返還は2月中旬から3月中旬に行なわれるようになった。その結果、遺骨の2/3は3月中旬に返還式で返還された。今後、慰霊祭開催時期は検討されねばならないだろう。慰霊祭は、系統解剖実習(解剖学)と病理解剖(病理学)の合同で行なわれる。参加者は、それぞれの遺族や白菊会等の関係者および来賓である。本学からは学長始め、教職員および学生が参加して無宗教方式の献花が行なわれる。解剖体名簿は、慰霊祭終了後、慰霊塔に奉納される。なお、本学には納骨堂は無く、遺骨は全て遺族等の関係者に返還している。 解剖体の教育への利用:献体は学生の人体解剖実習に供される他に、要望により、臨床的な局所解剖あるいは卒後研修にも供される。また、県内のコメディカル養成機関の見学実習にも供され、医療の質の向上に役立てられている。解剖の実習・見学を行なった学生全ての実習感想文が提出・編集され、白菊会会員に読まれている。 問題点と将来の展望:本学の献体業務は、ほぼ順調になされていると考えられる。しかし、献体業務と白菊会運営の為の仕事の多くは、解剖学職員や一部の白菊会会員のボランティア的支援に依存している。恒常的な公的経済支援は少なく、本学では県医師会会員等からの寄付を仰いでいる。献体業務に関与する人的・経済的視点に目が注がれ、改善されなければ、医学教育の基礎は次第に貧弱になるであろう。
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