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神戸大学のじぎく会の21年

 

神戸大学医学部

 

神戸大学のじぎく会は、昭和50年に結成され、昨平成7年に20周年を迎えた。しかし昨年神戸は年明け早々大地震に見舞われた事もあって、大きな記念行事は行われなかった。ただ過去15年間出してきた実習学生の感想文集の中から良いもののみを選んだ実習学生感想文珠玉集が、出版された。今年は結成21周年となっている。
しかしこの21年間に会員の増加は著しく、現在登録会員は4,645人となっている。ここで過去21年間の経過を簡単に辿ってみると、この会の結成時の会員数は130余であった。会長は大畑忠太郎氏、副会長は人位秀男氏であった。しかし間もなく大畑氏は成願され、人位氏が会長に就任された。人位氏は会員獲得のために兵庫県下を廻られ、成果を挙げられた。
昭和55年の秋に私が武田創教授の跡を継いだ頃、会員数は800に達していた。ただ問題は、増加しつつある事務処理を誰がするのか、会員獲得運動に要する費用を会長に依存していてよいのか、という事であった。しかしこれらの問題も学部長を初めとする医学部当局や、医学部同窓会の協力によって解決され、会員数は毎年増加していった。これには献体法の制定や文部大臣の成願者への感謝状の贈呈などに代表される全国的な献体運動の盛り上がりも大きな要因となっていた。
だが皮肉にもその頃から、今度は将来の医師過剰が叫ばれるようになり、国立大学においては厳しく定員削減が実行された。神戸大学医学部においても平成元年から120名の定員が100名に減らされることになった。そして当然の帰結として、解剖体の過剰が生じる事になった。これに対する効果的な対策は、篤志解剖全国連合会においても解剖学会においても打ち出される事がなく、神戸大学のじぎく会は全国に先駆けて登録会員の制限に踏み切らざるを得なくなった。
神戸大学医学部およびのじぎく会としては、折角の献体の申し出を断ったり、登録期日を延期したりする事は、全国の献体運動に水をさす事になるのではないかと、躊躇したが、実行してみると案外うまくいき、現在は制限を当初の年間200名から150名にしている。しかしそれでも年間約60体の献体があり、50体は正常解剖学の教育に使わせていただいているが、残りの約10体は臨床的局所解剖学の実習に活用させていただいている。
このような趨勢に伴い、三代目の豊田善唯会長は、会の方針を「仲良く健康で長生きすること」にされ、年一回の総会やのじぎく通信の編集は、この方針の下に行われている。献体の会の方針は、各大学においてそれぞれ違うと思われるが、何れすべてがこのような方向に向かうのではないかと考えられる。それにしても当のじぎく会や献体運動そのものが、このようないわば安定期とも言うべき状態に入りつつあるのは、喜ばしい事ではなかろうか。
(1996.7.1 山鳥 崇)

 

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