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献体団体不老会に支えられた中部五大学の解剖学教育

 

名古屋大学医学部

 

名市大、愛知医大、保健衛生大、愛知学院大及び私共の名古屋大学における医大生に対する解剖学教育は、献体団体である不老会々員の皆様により永年にわたり支えられ今日に至っています。医学教育カリキュラム改革、全国諸大学において様々の形で進められていますが、医学教育の根幹をなす解剖学教育、殊に御遺体を用いての系統解剖実習の重要性は不変であります。
私共名古屋大学医学部におきましては、教養部廃止に伴う全学四年一貫教育改革(医学部は六年一貫教育)に伴い、従来三年生に実施していた系統解剖実習を二年生に前倒し、四月から約四ヶ月間実施しています。学生は、系統解剖を通じて肉眼レベルで人体の構造を学びますが、同時に本実習を通して将来の医師への自覚、生命の尊さを学ぶことは申すまでもありません。不老会が発足する以前は、系統解剖実習の御遺体収集のために、解剖学教室の先輩の諸先生が文字通り東奔西走され、筆舌に尽くし難いご苦労をされたと聞いています。現在、私共は不老会の存在によりかって先達が御遺体収集に注いだエネルギーを系統解剖実習充実に向けることが出来ますし、更には解剖学教室に課せられた教育と共に研究ヘエネルギーを注ぐことが出来ます。
私共名古屋大学では、系統解剖実習と共に毎年夏休みを利用して解剖トレーニングセミナーを開催していますが、これも不老会々員の皆様の尊いご遺志に全面的に依存しています。全国の医系大学・医学部教官の系統解剖実習トレーニングの場として、不老会から提供された御遺体を用いて実習を行うものですが、系統解剖実習の機会に恵まれないパラメディカルの方々にとっては、貴重な機会となっています。不老会から提供された御遺体は、このように教育目的ばかりでなく、臨床各科の研究にも大きく役立っています。
御遺体に代わるもの、あるいは補うものとして精巧な人体模型が色々と工夫されています。再現性(繰り返し実習)の点など人体模型は御遺体を用いた系統解剖実習を補足、さらに充実させる点で充分意義あるものと考えます。しかし、御遺体を用いる意義は、前述しましたように、明日の医学の進歩を願う不老会々員の皆様の尊い志、生命の尊厳を学生が学ぶことにあります。不老会設立の経緯、現況などについては、不老会からの寄稿があると思いますので、私共名古屋大学医学部における教育・研究に占める不老会の存在の大きさの一端を記しました。
(解剖学教室第三講座教授 不老会々員 若林 隆)

 

 

 

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