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名古屋市立大学の献体40年

 

名古屋市立大学医学部

 

名古屋市立大学医学部における解剖用のご遺体は、そのほとんどを財団法人不老会からの献体に依っている。不老会は昭和37年(1962年)に発足した篤志団体で、昭和47年には財団法人の認可を受けており、本会の会員は愛知県内の5大学(名古屋大学、愛知医科大学、藤田学園保健衛生大学、愛知学院大学、名古屋市立大学)における医学および歯学教育のため死後ご遺体を献体されている。名古屋市立大学医学部では昭和43年(1968年)に不老会名古屋市立大学支部が設立された。当時の渡仲三教授(現名誉教授)をはじめ不老会本部ならびに支部役員の方々のご尽力により、年を重ねるごとに会員数が増加し、現在のところ支部会員数1,500人、既献体者数1,000人を数えており、毎年およそ50体のご献体をいただいている。
不老会支部が設立される以前は、昭和25年(1950年)に前身である名古屋女子医科大学から名古屋市立大学医学部へ移行した当時から、解剖用のご遺体の数はたいへん不足しており、学生6名に一体、あるいは8名に一体という状況であったので、当初は病理解剖後のご遺体で勉強させていただいたこともあったと聞いている。また予算が著しく不足しており、解剖実習室や解剖器具等の設備、備品も不足していて、十分な実習を行うことは難しかったようである。不老会支部設立後、献体者数は年毎に増加し、昭和50年頃には実習用ご遺体も学生2人に一体の割合で充足することができるようになり、また新教育棟6階に解剖実習室、処置室等が設置され設備の面でも往時とは比較にならないほど充実してきた。
1990年代に入ると、週休2日制の導入、医学部のカリキュラムの見直しなどが行われ、このような制度改革によって解剖学の講義、実習時間は大幅に削減されることとなった。これに対応するために、解剖実習はそれまでの一体のご遺体の解剖を4人で2回行う方式から、一体のご遺体を3人で一回解剖する方式に変更した。このような改革に合わせて、正規のカリキュラムとは別に、毎年夏休みに主として医学部の4、5、6年生および研修医から希望者を募って肉眼解剖セミナーを開講し、卒前ならびに卒後の臨床教育に役立てている。
また当大学では毎年11月または12月に解剖感謝式を行っている。解剖感謝式は系統解剖ならびに病理解剖の被解剖者の御霊を供養する儀式で、ご遺族の皆様、不老会の方々をはじめ、教職員、医学部学生、看護短期大学部学生の献花などが厳かに執り行われている。さらに毎年5月には、名古屋市の平和公園内に建立されている献体の塔において、不老会主催による献体者の慰霊祭「名札納め式」が執り行われ、愛知県内5大学の系統解剖の被解剖者の御霊を5大学合同で供養している。
このように現在名古屋市立大学では解剖実習用のご遺体数は充足しているが、献体されたご遺体をご遺骨としてご返納するのに、従来より比較的長い年月を要するという新たな問題が起こっている。しかし、幸いご遺族の皆様ならびに不老会の方々のあたたかいご理解を得て学生ならびに研修医の解剖学教育を滞りなく遂行できることに、教室員はもとより学生、教職員も深く感謝している。

 

 

 

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