献体25年
聖マリアンナ医科大学 聖マリアンナ医科大学は昭和46年4月に開学され、その翌年昭和47年に森本岩太郎初代主任教授により肉眼解剖学を担当する第2解剖学教室が開設された。医学部教育に欠くことの出来ない解剖学実習のご遺体収集を一から始めることが教室開設時の最優先業務であったことは言うまでもない。当初、献体団体はもちろん設立されておらず、第1期生からの系統解剖実習が滞りなく実施できるように、川崎市当局はじめ関係諸病院・学生のご父兄などにご理解とご協力を賜り、また前田徳尚理事長はじめ大学当局の全学的なご支援をいただき、解剖率については全国平均を上回るように教室を挙げて努力した。 慰霊法要は、昭和47年の8月16日に明石嘉門初代理事長により完成後間もない大学医学部本館地階の解剖学実習学生控室で解剖体の追悼ミサが行われた。非公式ながら、これが本学における解剖体慰霊祭の始まりであった。公式な第1回解剖体慰霊祭は昭和48年度から学内でのカトリック・ミサと川崎大師における仏式法要の2本立てで行われたが、この方式は明石理事長の裁断によるもので、今に継承されている。 本学設立後しばらくすると、篤志をもって生前から良医育成のために、本学に正常解剖の献体をお申し出くださる方が相次いで現れ、昭和54年春には約30名に上がった。そこでこの年の6月23日、念願の篤志献体団体「山百合会」の結成にいたり、教室内に事務所が置かれた。命名の由来は、「野のユリを見よ」というキリスト教の教えに加えて、神奈川県の県花が「やまゆり」であることに基づく。山百合会が発足してから今日までに入会登録された方は2,000名を越え(現在会員数1,369名)、358名(会員外登録者を含む)の方々が成願し、聖マリアンナ医科大学に献体された。平成8年度においては解剖体必要数の90%以上を会員の方々が占めるまでになり、近い将来には、解剖ご遺体はすべて山百合会会員となることが期待される。 篤志家の献体は、単に実習解剖体の確保という目的だけではなく、医師としての人間形成に重要な医の倫理教育の上で非常に意義深いものである。聖マリアンナ医科大学の建学の理念はキリスト教的人類愛を基礎に「生命の尊厳」「生命への畏敬」を基調とする人間性と倫理性の高い良医の育成である。山百合会会員の方々の崇高なるご意志は、本学の宗教的人類愛に根ざす医学教育の充実に大きく貢献していただいている。 終わりに、今日までの山百合会会員の方々のご厚志とご協力、ご関係各位のご理解・ご支援に深く感謝すると同時に、なお一層のご指導とご鞭撻をお願い申し上げる次第であります。 (解剖学教室 主任教授 平田和明)
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