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<献体活動28年〉充足後の在り方が課題

順天堂大学白梅会

 

順天堂大学医学部で最初の献体登録が行なわれたのは昭和27年。それから17年後の献体登録者が60名に達した昭和44年、白梅会が発足しました。一応60名の登録者が集ったとはいえ、まだまだ世間一般では献体というものを充分理解できず、解剖学教室の教授や、白梅会の故郡司理事長や小守事務長など先輩役員の方々は献体引取りに同行され、「献体の意義」についてお話しするなど登録者集めには随分とご苦労されたようです。
白梅会創立25周年総会(平成5年5月)の席で順天堂大学の石井昌三学長が「平成3年5月には、登録者数は1,677名に達しております。そして献体をされました物故会員の方は平成5年4月現在におきまして507名に達しております」と述べておりますように先輩諸氏の努力が今日の登録者の充足につながったものと思われます。
従って当白梅会も以前のように登録者の数を増すということから、今は登録者相互間の親睦団体という色彩が強くなってきています。この傾向は,白梅会のみならず、全国的に献体登録者の数は増えているようで、わが国の医学発展のため誠に喜ばしいことだと思いますが、最近新聞誌上などで、献体を望むのはわが国の核家族化とか墓地の入手難のためとか書かれていましたが、これはあくまで副次的なもので、「日本の医学発展のため」という純粋な気持と医学に対する理解度の向上が、献体登録者の充足につながったのではないかと理解しています。
そのいい例として、私は母を2年前献体し遺族の立場でもありますが、母が死ぬ間際「いよいよお役に立つ時がきたようだね」と心安らかに言った言葉に凝集されていると思います。また、昨年国立科学博物館で行なわれた“人体の世界特別展”が大盛況だったことも、その関心の強さがうかがわれます。
白梅会では現在会報を年2回出しております。その中に時々解剖実習を終えた学生さんの手記を掲載していますが、実にリアルな中に献体に対し謙虚かつ感動的な言葉が綴られており、それを読んだ会員から「実に有難い気持で接してくれている」と感謝の手紙が寄せられています。
なお、昨年は解剖学教室の要請で、はじめて解剖実習に入るという学生さんに対して、『献体登録者の心境と遺族としての感想』と題し私が特別講義を致しましたが、その時の学生さんたちの真剣な眼差しが忘れられません。また講義を傍聴された先生方も「学生たちは非常に感銘を受けたようだし、大変有意義でした」おっしゃっておられましたが、今後はこうしたことを踏え、何か新しい会の活動が必要なのではと思っております。
(理事長 名和 章)

 

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