
四、 試作
トラッキングが発生してできたグラファイトの絶縁抵抗値は、文献では概ね一〇〇Ω/mm以下とされてはいるが、実際にあった火災での試料を測定すると○・二Ω/mmのものもあり、その時にプラグの栓刃間に流れる電流を計算するとそれぞれ八三mAと、四一Aとなり大きな差がある。試作に際してはグラファイト化の進みが少ない一〇〇Ω/mm(八三mA)の方を装置の作動値の基準とすることにしたが、この値の電流が流れる時点では既に出火していることになるため、安全装置としては、この値よりもずっと低い電流しか流れていない早期のうちに検知して作動する性能が必要となる。
そこでこれを確認するために、まず試作品に用いるセンサーの作動特性の測定を行い(写真2)その結果を表2-1、2に示す。表から約五mAの電流をセンサーに流した時点で装置が作動し始めており、この時を絶縁低抗値に換算すると四、○○○Ω/mmとなった。これは発火する時の値を一〇〇Ω/mmとした上記の場合の四〇倍になり、初期のグラファイトの状態であると考えられた。

装置はこのセンサー、発熱体及び温度ヒューズにより電源を自動的に遮断する構造になっており、(写真3・4)センサーには逆流防止用ダイオードを組み込み、さらに表面に出ている端子は屋内配線のアース側と同電位としているので人が触れても電流が流れないようになっている。これは電車の線路に電流が流れているのに、触れても人には電流が流れないのと同じ理屈である。
また、センサー部分には最大でも一〇mAの電流しか流れないため、故意に端子とプラグの電極に触れても感電しないように配慮している。(漏電ブレーカーでも、一般に三〇mA以上流れないと遮断しない)(図2)

図2-1
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