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◇綾部市消防本部◇(京都)

 

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綾部市は、京都府のほぼ中央に位置し、面積は三四七・一一km2と広大で近畿圏では三番目に広く、四季折々の丹波の美しい山並みに抱かれ、由良川の清流が市街地を貫流する山紫水明の地である。
歴史と伝統を語り続ける綾部市は、足利尊氏生証の地といわれる安国寺や京部府の無形文化財にも指定され約八〇〇年の伝統を誇る「黒谷の手すき和紙づくり」など史跡と文化財にも恵まれている。
昭和六三年に発見された私市円山古墳は、約一、五〇〇年前に由良川中流域を治めていた王の墓として造られたもので、直径約七〇mの円墳には葦石を約六〇、〇〇〇個敷きつめ、頂上から三列に約一、〇〇〇基の埴輪で囲まれており、綾部市のシンボルとして、時を超え古代ロマンを訪れる者に語りかけている。
また、昭和二五年の市制施行と同時に全国に先駆け「世界連邦都.市宣言」を行い、恒久平和と環境保全を願う活動を展開している。

 

♪少数精鋭の歴史
消防本部は、昭和三〇年五月に発足したものの、職員数は消防長他三名であり、消防長も助役の兼任という状況であった。以後漸次職員と施設等の増強を図り、現在では一本部、一消防署、一分駐所の総員四八名で四〇、〇〇〇人余市民の生命、身体、財産を守る消防の任に当たっている。
また、市民からの期待が大きい救急業務についても、救急救命士として三名が資格を取得し活動しており、一名が養成所に入所中で救急業務の高度化も着実に進んでいる。
ほとんどの職員は係等を兼任しており、職務遂行に幅広い知識や技能が要求されるが、それらに対応するため職員一人ひとりが自己啓発に努めている。

 

♪地域防災の両輪
消防本部を地域防災の一方の車輪に例えれば、もう一方の車輪は消防団である。一二分団一、一七四人の団員は、郷土愛の精神に根差し、災害対応、各種訓練や予防広報活動等に活躍している。
特に予防活動においては、全世帯を対象とした防火診断を実施したり、住民との防火座談会を行う等地域に密着した消防団の特性を最大限に生かし、火災要因の排除や防火意識の高揚に努めている。

 

♪細やかな消防行政
平成七年三月より聴覚障害者を対象として「緊急通報FAX」の運用を開始している。この制度は市内在住の聴覚障害者二二人の自宅に緊急通報用のファクシミリを設置し、聴覚障害者の緊急通報の手段を確保したものであり、有効に活用されている。

 

♪火災予防週間の華
当消防本部では、火災予防週間の行事の一環として、市内の事業所に勤務する女子社員を一日女性消防官として任命しており、平成八年も四名が任命された。一日女性消防官は、消防長より辞令を交付され、防火対象物の査察や救急講習等を体験した後、街頭に出てパンフレットを配布し、道行く市民に火災予防を訴える。
後日、彼女たちは各事業所において体験発表を行っており、各事業所の防火防災教育にも大いに役立つとの評価を得ている。

 

♪座右の名
西田消防長は、消防長就任以来職務を遂行するうえで、「和を大切に」「原点に返って」「謙虚な気持ちで」という三つの基本を職員に徹底し、チームワークの強化や市民サービスの向上に努めて来たと語られた。
また消防長は、「うちの職員はオールマイティな職員の集まりだと自負している。」と部下に全幅の信頼を置いておられたが、一方では「みのるほど頭のさがる稲穂かな」という消防長の言葉には、職員管理に目を光らせる厳しさと謙虚さが感じられた。(相澤徹哉)

 

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