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消防行政紛争事例解説

 

全消会顧問弁護士 木下健治

 

消防行政をめぐる紛争は、消防行政の各部門で発生している。そのうち、救急紛争事例については、「ほのお」九四年七号で、防火管理指導については、同九五年七号で解説したところである。今回は、火災調査に関する紛争について解説したい。なお、意見にわたる部分は、筆者の個人的見解である。

 

事例一、火災原因調査書類の閲覧
『事例内容』
X会社の応接室に置いてあったY社製造のテレビの発火により、火事になり、応接室を消失してしまった。火元のX会社が、PL責任を追求するために火災原因調査にあたったA消防署長に対して、火災原因調査書類の閲覧を求めてきた。この場合、A消防署長としては、閲覧に応じなければならないか。
『解説』
一 PL法(製造物責任法)の責任
PL法は、「製造物責任法」として、平成六年七月一日に公布され、平成七年七月一日より施行されている。
アメリカでは、製造物責任をプロダクト・ライアビリティ(Product Liability)と呼んでいるので、その頭文字をとってPL法といっているのである。
二 製造物責任法の目的
製造物責任法(以下「法」という)の目的は、「製造物の欠陥により人の生命、身体、又は財産に係る被害が生じた場合における製造業者等の損害賠償の責任について定めることにより、被害者の保護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与すること」である(法一条)。
三 製造物
製造物とは、「製造又は加工された動産」をいう(法二条一項)。
不動産は法の対象とはならないが、不動産に組み込まれた動産は対象になる。例えば、建売住宅に付設されたガス給湯器具に欠陥があったため、シャワー中に突然熱湯が出て、火傷をした場合には、ガス給湯器具の製造業者は法による責任を負うことになる。
又例えば、住宅のドア、サッシ、ユニットバス、建物中の建材等の欠陥による事故については、法が適用になる。
「製造又は加工された動産」のうち、「製造」とは、原材料に工作を加えて新たな物を作り出すことをいい、「加工」とは、動産を材料として、これに工作を加え、その本質は保持させつつ、新しい属性を付加し、価値を加えることである。
四 欠陥
法における「欠陥」とは、「当該製造物の特性、その通常予見させる使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期、その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていること」をいう。
「通常有すべき安全性を欠く」という表現は、国家賠償法二条一項の「公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体がこれを賠償する責に任ずる。」という規定の「瑕疵」の解釈として、判例で述べられている。
即ち、「営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、これに基づく国又は公共団体の賠償責任については、その過失の存在を必要としない」とする最高裁、昭和四五年八月二〇日判決がある。
「法」による「欠陥」も、同じように考えてよいであろう。
欠陥は三つに分類できる。
それは、?@製造上の欠陥、?A設計上の欠陥、?B指導・警告上の欠陥である。
「製造上の欠陥」とは、製造物が、設計、仕様とおりに製造されていないため、安全性を欠く場合である。

 

 

 

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