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◇南佐渡消防本部◇(新潟)

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新潟県の沖、日本海に浮かぶ佐渡は、東京二三区の一・五倍、沖縄に次ぐ日本で二番目に大きな島である。海流の影響もあって気候は温暖で農、水産物に恵まれ生活には最適である。事実、歴史を遡ると、一万年以上も前の古代人の遺跡が確認されている。
佐渡は一時、流人の島という暗い過去をもっている。ただ、流人は皇族、貴族、高僧や文化人等で時の政争の敗者がほとんど。今、佐渡にはこの伝統が色濃く残っている。島内には神社、寺院が合わせて五〇〇を越え、さまざまな形で奉納された能、狂言、人形芝居等・・各地に受け継がれている。この外民話等も豊富で、祭りに至っては数えきれないという。佐渡の文化は「日本の縮図」と一言われる所以であろう。
佐渡が注目されたのは、やはり金山発見から後で、今日の礎となっている。金とおけさとタライ舟観光の島である。
消防本部は島の南西部に位置する羽茂、小木、赤泊の三町村の組合で面積二二〇?q2、人口:一四〇〇余名。昭和五五年に発足、現在は吉田消防長以下四二名が地域の安全を守っている。
♪真心こめて
寝たきりや一人暮らし老人等災害弱者宅は、民生委員同伴の上防火診断を行っている。この際、茶わんをプレゼントしてきた。島には「無名異焼」という独特の陶器がある。幼稚園児が絵付け、老人クラブ員が窯焼きしたもの。多くの人の手を通し、防火の願いをこめた茶わん、大変喜ばれている。
♪駅伝でPRと体力増強
一一九番の日創設をPRするため始めた「南佐渡防火駅伝」。本部職員四チームでスタートしたが、今年の参加は島内の他本部をはじめ、官公庁や企業など三九チームに達する盛会となった。中には一一月九日を振替え休日にした企業も出た。職員はこの時期、全選手に配るゼッケン作りにおおわらわである。また、応援にも熱が入っている。海外にも名が知れた「鼓童」チームなどは、本番さながらで、外にも地元祭衣装を使ったり思考を凝らした応援合戦もみものの一つになってきた。この駅伝、佐渡のイベントに成長した。(写真)
一方、訓練でも成果をあげている。救助隊員は全国救助大会を目指し訓練を続けてきた。その甲斐あって、札幌大会には三種目七名が出場し、全員が入賞する快挙。小さな本部に大きな誇りを持ちかえったところである。
♪教訓は生かせ!
阪神・淡路大震災を教訓に、毎年、各町村毎に防災訓練を行っている。赤泊村の主催ではM七・五の地震があったという想定。消防本部をはじめ、赤泊消防団一三一九名、漁協など有力団体の外、住民五〇〇名が参加した。訓練項目は九種類、変わり種は体験学習館と称する消防学校。校長が村長、教頭が消防長、役場及び本部職員は先生といった配役。二時間の講習の後、学・実科のテストを実施、優秀者を表彰する。体験で消防の仕事を理解してもらうことを目的としている。
教訓からもう一つ。消火栓が壊滅的だったことから、防火水槽の増設を推進している。現在二三五個、「家が三軒集まれば水槽を作る」とか。あながち夢とばかり言えない勢いである。
♪相互信頼あとは誠実
吉田消防長は組合設立からこの道に携わった一人。当時は各町村から利害をからめた難問が続出、「口角沫をとばした」とだけで多くを語らないが、その沫は太い絆に変わっている。住民ともあらゆる機会をとらえ、連帯感を築き上げてきた。そんな地域だけに、消防長のモットー「誠実」は一層効果をあげるに違いない。
(海老原光三)

 

 

 

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