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危険物施設に対する措置命令

消防大学校助教授 金子誠

はじめに
消防法上の措置命令とは、行政庁たる市町村長等、消防長又は消防署長などの命令権者が消防法上の根拠に基づき、公権力の行使として、具体的な火災危険や消防法令違反について、関係者に対し義務の賦課を生ぜしめる意思表示をいい、学問上の行政行為に当たる。
また、実務上あるいは法令上の「処分」に該当する代表的な行為である。
関係者に対し、強制力を有し、法的効果を生ぜしめる効力を有する点において、同じ意思表示であっても、これらを有しない行政指導と好対照をなす。
以上のような消防法上の命令は、危険物施設の使用停止命令などおよそ二〇に及ぶが、その数において建築基準法、高圧ガス取締法、火薬類取締法、食品衛生法、宅地造成等規制法その他多くの防災法規あるいは保安法規に比べ類例をみない。
このことは、消防の任務、目的から規制領域が広範囲にわたっていることに由来するものと考えられるが、いずれにしても消防機関の権力の強大性をしめすものである。
ここでは、消防法上の措置命令の中から危険物施設に対する措置A.P令について述べる。
一、 危険物施設と措置命令
危険物施設に対しては、その保安の確保を図るために権限が法により都道府県知事又は、市町村長等に付与されている。
法により規定されている命令権限はつぎの通りである。
(一)市町村長等の命令権限等
?@危険物の貯蔵、取扱に関する命令(法第二条の五)
?A危険物施設の基準適合命令(法第一二条第二項)
?B危険物施設の許可の取り梢の処分(法第一二条の二第一項)
?C危険物施設の使用停止命令(法第一二条の二)
?D危険物施設の緊急使用停止命令等(法第一二条の三)
?E危険物施設の予防規定の変更命令(法第一四条の二第三項)
?F危険物施設の事故時の応急措置命令(法第一六条の三第三項)
?G移動タンク貯蔵所の事故時の応急措置命令(法第一六条の三第四項)
?H無許可施設等に対する措置命令(法第一六条の六)
(二)都道府県知事の命令権限
危険物取扱者免状の返納命令(法第一三条の二第五項)
以上の命令又は処分に従わぬ場合には、法は危険物施設の保安を確保するため、それに続く手段を用意している。原則として

 

 

 

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