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◇岡谷市消防本部◇(長野)

 

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信州の真ん中、『諏訪湖』その西岸、天竜川の源である釜口水門の北側に位置する岡谷は、「シルクの町」としてにぎわった産業都市。岡谷で生糸産業が行われるようになったのは明治から、豊富な水と地形的条件等で盛んになり、最盛期には、日本の生糸の約四〇%を占め、明治の終りには「世界の岡谷」となった。その後、生糸の代わりに台頭してきたのが精密機器産業、さらにハイテクを駆使しての情報産業と、常に時代の最先端を歩んでいる。また、近年は温泉も湧きリゾート地としても躍進中。市街地周辺には、小鳥のさえずる森として有名な(日本の音一〇〇選)塩嶺御野立(えんれいおのだち)公園、市の大切な水源であり、水源の森一〇〇選に指定されている横河川など多くの自然に囲まれている。
毎年八月十三・一四日全市あげて行われる岡谷太鼓祭りは、世界各国にも紹介されている。祭りのクライマックスは名物「岡谷太鼓」の三〇〇人揃い打ち。市内全域に響きわたるかのような大音響はまさに勇壮そのもの。この迫力、華麗さを一目見ようと全国から訪れる観客であふれる。(写真)
消防本部は、昭和二三年三月発足、一本部一署、四八名の職員が一一分団、五四九名の消防団員とともに人口約六〇、〇〇〇人の地域防災の任にあたっている。

 

♪時代の流れに目を向けて
「職員は少ないが、中身で勝負」と山田消防長。昨年の阪神・淡路大震災へは、近隣消防本部の協力を得て三名の職員を派遣、長野県緊急消防援助隊合同訓練等へも積極的に参加している。早め早めの人材育成をモットーに、救急救命士は三名を養成し、運用している。また、県のヘリコプター要員に一名派遣する予定がある。他の職員も、各種資格取得にチャレンジしており、設備点検車を導入し点検資機材、パソコン等を整備、消防設備・危険物関係の資格が職務に反映できる環境も整っている。さらに、コンピューター関係に精通している職員などは、山田消防長の「職務を効率的に行うために活用できないか?」という要求に、自らプログラムを作成し、みごと期待に応えている。

 

♪市民と一体になって
年に一度、高齢者世帯を訪問(二年に一度は消防団員とともに)し、火の光点検を実施している。その際、署員手作りの湯呑み茶碗をプレゼントするなど工夫を凝らしている。また、消防音楽隊・ラッパ隊を編成し、市民とのつながりを大切にしながら火災予防への意識を喚起している。

 

♪一日で火災予防
毎年、小・中学校に防火ポスター。の作成を呼びかけ、集まった作品の中から優秀な作品をカレンダーにして、市内に配布している。どの作品も、子供ならではのユニークな発想で、おもわず「ドキッ」とする作品が多く、人々の目を引きつける。今年は、この作品の中から長野県の防災ポスターに採用され、広く県下に火災予防を呼びかけ成果をあげている。

 

♪視野を広くもとう!
和を大切にと、職員相互の交流をレクリエーション等で積極的に行っているという本部には、消防長を中心に家庭的雰囲気が漂っている。また、他部局との交流を通して消防以外の知識を得る努力を心がけているそうだ。
山田消防長が職員に望むことは、「常に問題意識を持って事にあたり、広い視野と人とのつながりを大切にしてほしい。」とのこと。「少しでも視野を広げれば、目の前は狭くても、その先はどんどん広がっていくんだよ。」という言葉に消防長を先頭に何事にも前向きに取り組む職員の姿が目に浮かび、岡谷市消防本部のさらなる発展を予感させた。
(佐藤俊夫)

 

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