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救急業務の現況と課題について

自治省消防庁救急救助課 山口英樹

 

はじめに
昭和三八年に救急業務が法制化されてから三〇年以上が経過、法制化当時救急業務を実施する市町村は二一四市町村にすぎなかったが、平成八年四月一日現在では、三、一二五市町村となり、全国三、二三二市町村の九六・七%が救急業務を実施している。救急業務が実施されている地域の人口の全国総人口に対する割合でみると、昭和三八年当時約五〇%であったものが、九九・六%とほぼ一〇〇%に近くなってきている。また、平成七年中の救急隊の出場件数は三二八万件余に及び、ここ数年に比較しても高い伸びとなっている。
本稿では、平成七年の救急業務の概況、救急救命士の導入効果等について数値に基づき説明し、今後の課題について言及することとしたい。

 

一 救急業務の現況
(一)救急業務実施状況
平成七年中の救急隊の出場件数は、三、二八〇、〇四六件で前年の、三、〇四九、〇〇〇件に比べ、二三一、〇四六件、七・六%増加しており、ここ数年に比較しても高い伸びとなっている。これは我が国のどこかで約九・六秒に一回、国民四〇人に一人の割合で救急搬送されていることとなり、今や、国民生活において、必要不可欠のものとなっている。
全国の救急隊の総平均として、覚知時点から現場到着までの所要時間は六・○分、覚知時点から医療機関への収容までの所要時間は二四・二分と、時間との闘いの中で、住民に密着した業務に従事している。(第1表参照)

 

(二)救急業務高度化の要請と救急救命士制度の発足、運用等
ア 救急業務は、現行法上、「傷病者が医師の管理下に置かれるまでの間において、緊急やむを得ないものとして、応急の手当を行うこと」を含むとされており、その応急手当の内容は「救急隊員の応急処置等の基準」(昭和五三年消防庁告示第二号)において定められている。
従来、この基準により救急隊員による搬送途上の応急処置が行われてきたところであるが、近年、交通事故の増加傾向、高齢化の進展、疾病構造の変化等により、救急現場及び搬送途上において呼吸・循環不全に陥る傷病者が増加しているにもかかわらず、我が国のプレホスピタル・ケアの現状は、医師が関与することが少なく、また、救急隊員の行う応急処置の内容が欧米諸国と比べて十分なものでないことが指摘されていた。
イ こうした状況を改善するため、医療関係者及び救急業務関係者等で構成される救急業務研究会は、救急に対する国民のニーズの高まりに的確に対応するとともに、最近の医療機器の進歩等も踏まえつつ、プレホスピタル・ケアを充実し、傷病者の救命率の向上を図るための具体的

 

 

 

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