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災害と気象

気象予報部予報課 林文

近年の急速な都市化や、居住地の拡がり、防災設備の進展などにより、自然災害の発生形態が大きく変わり、それに対応して災害対策も変化してきている。
現代の日本、特に都市部で、ひとたび災害をもたらすような顕著な自然現象が発生すると、人為的な条件(人工施設の管理の不十分など)が結びついて、高度な社会システムは広範囲にわたり甚大な被害を受け、経済的な損失が極めて大きくなることも起こるようになった。これは平成七年に起こった阪神・淡路大震災や、気象災害としては平成五年に起こった九州南部地方を中心とする豪雨災害を見ても明らかである。
気象(日大気の現象一は様々な災害に深く関係している。湿度や風は火事の発生や延焼に大きな影響を与えるし、雲仙普賢岳の例から分かるように、火山噴火があるとその後の降水により土石流が起こり二次的に大きな被害をもたらすことがある。また、このように気象が間接的に関わるだけでなく、気象そのものが直接の原因となって起こる災害も多く、これらを気象災害と呼んでいる。
本稿では気象災害に的を絞り、その特徴について概略を述べると共に、気象庁が発表する防災のための気象情報(防災気象情報という)について解説する。
一 気象災害の種類及び特徴
(一)気象災害の種類と気象じょう乱
気象災害の直接の原因は、大雨や強風などであり、それら個々の現象をもたらすのは台風や低気圧、梅雨前線などの気象じょう乱である。災害をもたらす気象じょう乱には様々な時間的・空間的なスケールがあり、出現しやすい季節や災害の現れ方などに特徴がある。
第1表に、冷害や干ばつなどの長期緩慢災害(比較的長い期間にわたる気象の平均値からの偏りを原因として発生する被害)を除いた主な気象災書をまとめる。
○最近の傾向
台風や梅雨前線などの顕著な現象は、毎年のように大きな気象災害をもたらしている。さらに、近年の都市化の進展に伴い、気象災害も種類や発生形態が変化してきた。
例をあげると、豪雨に伴うがけ崩れなど土砂災害による被害が増加した。これは、それまであまり人が住んでいなかった都市の周辺部の丘陵地で宅地造成が行われ、人為的に作られた急斜面が崩壊して起こる被害が発生しやすくなったためと考えられる。
また、舗装された地面の割合が増えることによって地中に水が浸透しなくなり、都市部で短時間の降水による道路の冠水や側溝の氾濫などの被害が多く起こるようになった。
山間部においても、高速道路が開通したことにより、それまで被害となることのなかった地域でもがけ崩れが発生するなどして交通障害となるようになった。.

第一表 主な気象災害 *1

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