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◇上砂町消防本部◇(北海道)
上砂川町は、道央空知支庁管内のほぼ中央に位置し、東部は重畳たる夕張山脈が南北に走り、しだいに西方に傾斜し、石狩平野に連なっている。
大正三年に三井鉱山合名会社が炭鉱事務所を設けてから本格的な炭鉱の町としてスタートし、一時は飛躍的な発展を遂げたが、昭和六二年、第八次石炭政策による閉山第一号として、八二年に及んだ炭鉱の町の歴史に幕をおろした。
町では、基幹産業を失ってから新規企業誘致等、数々の産業再構築を進めている。中でも平成三年、第三セクターにより建設された「地下無重力実験センター」は炭鉱の立坑(全長七一〇m)を利用し、一〇秒間の無重力状態を保つ世界最大規模の落下塔を有する。現在、国の研究機関等による実験が毎年五〇〇回程行われ新物質・新素材の開発等、様々な分野の基礎研究に貴重なデータを提供している。
消防本部は、昭和二九年一〇月発足。現在、一本部一署、職員一八名で、二分団、五三名の消防団員とともに面積三九・九一?qに住む五、七〇〇名余の生命・身体・財産を守る防災の任に当たっている。
♪長期無火災記録
当町は、狭溢な山間部の傾斜地に住宅、店舗、公共施設等が林立しており、極めて密度の高い市街地を形成している。このため、火災が発生した場合、その災禍が広域に及ぶことが懸念されている。
当本部では、庁舎近くに職員住宅を建設(現在六名居住)し、災害に備えているほか、住民の防火意識の高揚を図るため、婦人防火クラブ員との一般住宅及び高齢者福祉施設への防火訪問の実施、また、緊急通報システムの導入、応急手当の普及等に力を入れるなど住民と一体となって「災害のない町・災害に強い町」づくりを目指している。
これらの施策が功を奏し、ここ五年間における火災件数は、次表のとおりである。この間、七一一日(H3 5/2〜H5 4/12)及び七一七日(H5 9/6〜H7 8/23)にわたる無火災を記録している。

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ちなみに、全国一交通事故による死者が多い北海道において、当町では、昨年六月、交通事故による死者ゼロ四、○○○日を達成しており、住民の安全に対する意識が如何に高いかが推察できる。
♪冬季積雪対策
当町は、冬の降雪量が多く、降雪累計は年間八mを超え、その対策に苦慮しているところである。
まず、車両は、積雪寒冷地仕様四輪駆動車の導入が必要不可欠となっている。また、主要道路沿いの防火水槽には立ち上がり管、消火栓には背伸び管を設置し、補水口を地面より一・五m程高い位置にしている。さらにこの維持管理面においても防火水槽内の凍結防止を図るため、職員による見回り点検を行ったり、消防水利・庁舎車庫前の除雪を業者に委託し、早期に除去するなど半年近くに及ぶ長い冬への対応に万全を期している。
♪木遣り保存会の発足
昭和五五年一二月、明るい町づくりの一翼を担うことを目的として、消防団員を中心に伝統ある木遣り、纏及び登梯を一体化した「木遣り保存会」を結成した。例年、新春恒例の出初式において、見事な演技が披露されており、住民に好評を博している。(写真)

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♪目標はスペシャリストの育成!
大喜田消防長の、「全国一、二を争う小規模な本部で、各個人がオールマイティは当たり前…そこからさらに前進した『スペシャリストの育成』を目指している」という言葉に、二一世紀を担う職員(平均年齢三一歳一の育成に熱意を持って取り組んでいるのが、ひしひしと感じられた。
(鈴木浩永)

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