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ワンポイント 消防職員のための法令用語解説

 

行政手続法制定の経緯(一)

 

一、行政手続
今回から、行政手続法の解説をする。行政手続については、行政処分前の事前手続と、行政処分後の救済手続とがある。
消防職員にとって、行政手続法の理解は、かかせないものである。

 

二、行政手続法の歴史
日本において、「行政手続法」という名前が登場したのは、一九六四年(昭和三九年)九月に、「行政手続法草案」(三章一六八力条)が発表されたときである。
これは、臨時行政調査会(第一次臨調、佐藤喜一郎会長)の第三専門部会第二分科会作成(専門委員橋本公亘教授原案)のものである。
これは、第一次行政処分の手続、事後救済手続、苦情処理手続について定めた画期的なものだった。しかし、事後救済手続に関しては、既に、一九六二年一昭和三七年一九月に、「行政不服審査法」が、制定されていた。
行政手続法草案は、許可基準の公表義務、聴聞制度、弁明手続等を定めていた。そのほかに、行政庁の管轄に関する定め、行政調査(立入調査)に関する規定、行政処分の送達に関する規定が入っていた。

 

三、行政手続法草案のお蔵入り
しかし、行政手続草案は、お蔵入りしてしまった。
その理由について、塩野宏教授は、次のようにいっている(兼子仁、行政手続法一九八頁)。
?@行政手続法を促進する直接の利益集団のいないこと
?Aマスコミの注目をひかなかったこと
?B行政改革が、行政の簡素化の方向に向かい、行政手続法は、必ずしも簡素化と結びつかなかったこと
?C学界、法曹界への影響力が小さかったこと

 

四、第二臨調の行政改革答申
一九七〇年代、ロッキード汚職が発覚した。政治浄化の必要が叫ばれ、一九八○年(昭和五五年)八月、行政管理庁に、第一次行政手続法研究会(雄川一郎座長)が発足した。
一九八一年(昭和五六年)第二次臨時行政調査会(第二臨調、土光会長)が発足した。
一九八三年(昭和五八年)三月一四日、第二臨調は、第五次答申として、「行政情報公開・行政手続」に関する答申を出した。その中で、行政手続法制定の準備のための専門的調査審議機関設置を提案した。
一方、一九八三年三月一一日、第一次行政手続法研究会は、第一次要綱案を発表した。
それは、総則として、調査、送達。
処分手続として、中請手続、処分手続、命令制定手続。
特別手続として、土地利用計画策定手続、規制的行政指導手続を定めたものであった。
一九八四年(昭和五九年)、行政管理庁は、総務庁に吸収され、総務庁行政管理局が、「行政手続」を所管することになった。
そして、一九八五年(昭和六〇年)六月、総務庁に「第二次行政手続法研究会」が設置された。これが、第二臨調答申の「専門的調査審議機関」にあたるものである。
メンバーは、塩野教授を座長とし、小早川教授、守賀教授、佐藤英善教授、高木光教授等が委員になっていた。
全消会顧問弁護士 木下健治

 

 

 

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