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ワンポイント 消防職員のための法令用語解説

減殺請求の当事者

一、減殺請求の当事者
減殺請求者は、遺留分を有する相続人とその承継者、相続分を譲り受けた者である。減殺の相手方は、受遺者と受贈者またはその相続人である。そして、不相当な対価で被相続人から財産を譲り受けた者は、その行為が遺留分権利者に損害を与えることを承知していた場合、受贈者とみなされ(民法第一〇三九条)、相手方となる。
二、遺留分算定の基礎となる財産
遺留分は、被相続人が相続開始の時において有していた財産の価格にその贈与した財産の価格を加え、その中から債務の全額を控除して、これを算定する。条件附の権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選定した鑑定人の評価に従って、その価格を定める(民法第一〇二九条)。
贈与の範囲は、相続開始前の一年間にしたものに限り参入する。また、被相続人と受遺者が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、相続開始より一年前にしたものでも算入される(民法第一〇三〇条)。
三、減殺の方法
条件附の権利又は存続期間の不確定な権利を遺贈又は遺贈の目的とした場合に、その贈与又は遺贈の一部を減殺するときは、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って評価された価格を基準に、遺留分を超過する価格を受遺者又は受贈者に返還しなければならない(民法第一〇三二条)。
減殺の順序は、まず遺贈を減殺した後、不足分がある場合に、贈与の減殺をしなければならない(民法第一〇三三条)。
遺贈が数個あるときは、それぞれの遺贈の価格の割合に応じてこれを減殺する。但し、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意志に従う(民法第一〇三四条)。
数個の贈与を減殺するときは、後の贈与から始め、順次、前の贈与に及ぶ(民法第一〇三五条)。
四、遺留分減殺の効果
遺留分減殺の一般的効果は、遺留分を保全するに必要な限度で、贈与および遺贈の効力を消滅させることである。
受贈者及び受遺者は、減殺を受けるべき限度において、贈与又は遺贈の目的の価格を遺留分権利者に弁償して、返還義務を免れることができる。受贈者が贈与の目的とする物の上に権利を設定した場合にこれを準用する(民法第一〇四一条)。
五、減殺請求権の消滅時効
減殺請求権は、遺留分権利者が、相続の開始および減殺すべき贈与または遺贈があったことを知ったときから、一年間、遺留分請求権を行使しなかったときは、時効によって消滅する。相続の開始の時から十年を経過したときも同様に消滅する(民法第一〇四二条)。(民法・相続終了、次回からは行政手続法)
全消会顧問弁護士 木下健治

 

 

 

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