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◇栄町消防本部◇(千葉)

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栄町は千葉県の北部に位置し、北に利根川を背負い、南に印旛沼を抱いた東西に長い町である。一部に丘陵地帯があるが、ほぼ平坦で、水と緑に恵まれた自然豊かな田園都市である。往時の栄華をしのばせる古墳、遺跡、文化人の句碑等が大切に保存されている。
一方、東京都心から四五?q圏、新東京国際空港から一〇?qとの立地から、近年は大規模宅地開発が進んでおり、二六、○○○人の人口も増加の一途をたどり更なる飛躍が期待されている。
♪本部発足への準備周到
当本部は、平成六年一〇月、管内面積三二・四六?q、一本部、一署、四二名で発足した。当町は、昭和六一年七月、一三名の職員で任意に救急業務を開始した。その後毎年職員を増強し、救急研修、消防学校研修を修了させ一〇年にわたり本部発足に向けて準備を進めてきた。その甲斐あって、消防長以下全員が町職員から消防吏員への発足となった。これは、町当局の防災に対する深い理解と熱意の表れであり、職員にとっても大きな誇りであるに違いない。
また、消防団は、一団、六分団三七三名。各分団には、郡ごとにポンプ車、積載車が配置されており、本部発足までの防災を一手に担ってきた実績がある。中でも変わり種は、全員が町役場職員というその名も役場分団。平日、昼間は、本部隊と間髪を容れず出勤、その活躍は高い評価を得ている。
♪「安心カード」で安心
消防本部では、昭和六三年から「安心カード」を発行している。この制度は、救急業務の円滑化と住民救急対策の一環としたもので、交付基準は町民で、一人暮らし、疾病を有するもの及び消防長が必要とみとめた者となっている。このカードは、交付を受けた者が常時携帯し、カードにリンクさせた記録簿に住所、氏名、連絡先はもとより、血液型、病歴、かかりつけ病院等々最新情報を記録、本部で管理している。いざ!と言う時には、カードと記録簿との照合により、救急処置、搬送、医療処置をスムーズに行なうことができ、救命効果をあげるというもの。当事者をはじめ、関係者が安心できるメリットがある。現在、二七九名が交付を受けている。
♪伝統的な水防演習
利根川右岸に係わる五市五町村は、周辺水防団体と連合会を構成、成田、印西、朱の三市町が輪番に幹事役となって、昭和二九年以来毎年水防演習を実施している。演習は消防団員、日赤、自衛隊、土木事務所等多方面の参加がある。水防組合歴二〇余年、事務局長も勤めた白石消防長は格好の指導者、職員も高い技術を身につけている。それだけに水防工法も基本から、五徳縫い、土のう羽口、畳張り、屏風返し(写真)と一〇数種に及ぶ多彩さが伝統となっている。これが近隣の水防関係者から注目され、視察、見学等で一、○○○人以上となり、一都六県連合水防演習を二回行なった実績がある。
♪信頼される本部をめざす
白石消防長は「出前行政」を唱える行動派。新開発地に隣接する
消防団は負担が大きいため、地域内各自治会を説得、「自分達の町は自分たちで」と自主防災組織を発足させた。同時に地域内すべての消火栓に、放水器具を収納した消火栓ボックスを設置し、初期消火に効果を挙げている。消防長のモットーは「先見性」。本部発足にあわせ、本来町長部局事務とされる防災会議、災害対策本部関係も本部事務として処理している。このあたり、先見を意識したものか。いずれ時が答えてくれるだろう。本部の一〇年後を伺ったところ即座に「一人前」と。すぐ「いや五年!」と言い直した。廻りはじめた車に確かな手応えを感じている様子。最後の一言は、さらに弾みをつけたいと願った言葉として印象的だった。(海老原光三)

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