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ワンポイント 消防職員のための法令用語解説

遺留分の算定

 

一 遺留分の割合
遺留分の割合は、誰と誰が相続人となるかにより、相続財産に対する遺留分の割合が規定されている。
?@相続人が被相続人の直系尊属だけの場合は、被相続人の財産の三分の一。
?Aその他の場合は、被相続人の財産の二分の一。
具体的に例を示すと、
?T 直系卑属だけが相続人である場合は二分の一。
?U 配偶者と直系卑属が相続人である場合は二分の一。
?V 直系尊属だけが相続人である場合は三分の一。
?W 直系尊属と配偶者が相続人である場合は二分の一。
?X 配偶者だけが相続人である場合は二分の一となる。
具体事例を掲げ、遺留分の割合を考えてみる。例えば、先妻との間に子供が一人いる父親が後妻を娶り、「相続財産は後妻に全部相続させる。」という遺言を残し、加えて遺言執行者を指定して、その者に遺言の実行をさせて死亡した場合、子供は相続財産を取得することができるか。またそれぞれの遺留分はどうなるか。
父親の相続財産が一億円であった場合、相続人が後妻と子供であるときの子供の遺留分は、一億円1/2×1/2%二五〇〇万円である。
子供は後妻から二五〇〇万円の遺留分を請求することができる。
この場合子供は後妻に対して二五〇〇万円の返還請求権を有する。父親の相続財産は遺言執行者が遺言を執行しているため、相続財産金では後妻名義となっている。後妻はこの中から、子供に二五〇〇万円を返還する義務を負う。こうした場合の子供の返還請求権を遺留分減殺請求権という。
二 遺留分減殺請求権
遺留分権利者およびその承継人は、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈および一定の限定された範囲での贈与の減殺を請求することができる(民法第一〇三一条)。遺留分権利者およびその承継人は、遺贈または贈与があったために遺留分額が不足した場合に、遺留分に関する権利にもとづいて、遺贈および贈与を遺留分額の保全に必要な限度で、減殺を請求することができる。
三 遺留分請求権の性質
遺留分請求権の性質は、形成権であり、その権利の行使は、受遺者または受遺者に対する意思表示によってすれば足り、必ずしも裁判上の請求によらなければならないものではなく、その意思表示がなされた以上法律上当然に減殺の効果が生じるものとされている(最高裁昭和四一年七月一四日判決)。
全消会顧問弁護士 木下健治

 

 

 

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