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消防最前線

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火災

板敷渓谷林野火災
甲府地区広域行政事務組合消防本部(山梨)
はじめに
当本部は、山梨県の中西部に位置し、南に霊峰富士を、北には八ヶ岳、東には大書蔭峠、また西には北岳を主峰とする南アルプスが連なる二、○○○〜三、○○○m級の山々に囲まれた甲府盆地の中心、県都甲府市を中核とした一市五町で構成する組合消防である。
一本部、三署、丸出張所、職員三〇五名、消防団員一、七六五名で、圏域二九万余名の住民の安全を確保するべく防災の任に当たっている。
圏域は、東西約一二?q、南北三六?qと南北に細長く、北部は山岳地帯であり圏域全体の五九%を占めている。気候は、内陸型であり特に冬季には空っ風といわれる北西の季節風が強く、盆地特有の「夏は蒸暑く、冬は寒さが厳しい」ところである。
今回紹介する林野火災は、圏域北部で二一月中、乾燥注意報発令下において八件が連続発生し、再燃防止活動を含めて職・団員延べ一、三四二名、出動車両二六五台、日数一五日を要し、八・二?qを焼失したものであり、昨年山梨県に導入された防災ヘリコプターも要請するなかで、散水回数は実に一二五回にも及んだ火災であった。
本稿では、前記の中でも最も規模が大きく、非常に困難を伴った板敷渓谷火災を紹介する。
一 火災概要等
(一)出火日時 平成七年一二月六日(水)一八時二五分
(二)出火場所 甲府市川窪町大渡
(三)鎮火日時 一二月八日(金)一二時三五分
(四)焼損程度 ツガ、杉、雑木 一二〇a
(五)ヘリ要請 七〇回 五六、○○○l
(六)気象状況 天候晴れ
気温 六・三℃
風速 四m/s 北北西
湿度 六三・四%
二 現場付近の概要
現場は、渓谷美を誇る御岳昇仙峡の北東に位置し、多目的ダム能泉湖から黒平町に至る県道沿いの板敷渓谷一標高一、四〇〇mの山林)で、市街地から車で約五〇分の時間を要する山岳地である。付近には民家はなく、急勾配のため冬季には狩猟者か、よほど地理に明るい者でないと入山には危険を伴う場所である。
三 活動概要
一二月六日一水)一八時四三分に覚知し、第一出動隊が現場に到着したのは一九時二〇分であった。渓谷沿いの県道上から現場を確認すると、火勢は山腹の西側斜面及び東側斜面を頂上に向かって延焼中であった。
到着と同時に現場本部を設置し、気象状況を指令課に問い合わせ、風向を考慮しながら入山経路を検討した。
入山に当たっては、隊員の安全を第一とすることから、林道を迂回し、山頂付近の東側から延焼阻止のため、第一出動隊二二名を入山させた。
第二出動隊が到着したのは三七分後の一九時五七分であったが、電源車も到着し、更に地元消防団員も五〇名程出動したため、第二出動隊を二班に編成し、起伏の激しい岩場を地元消防団員の誘導により、延焼中の西側斜面と頂上付近の北側から包囲し消火にあたった。
急峻であり、また起伏の激しい岩場にロープを展張し、無線を活用しながらジェットシューターにより果敢に消火活動を展開したが、火勢は意外に激しく期待する程の効果は認められなかった。このため、チェーンソーを用いて枯大木等の伐採を開始しよ

 

 

 

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