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平成8年度消防関係財政措置について

自治省消防庁消防課 榎本佳一郎

 

一 はじめに
平成八年度の消防庁が所管する消防防災関係の補助金については、昨年一月一七日の阪神・淡路大震災の教訓を踏まえた、初めての本予算として編成され、また、地方交付税をはじめとする地方財政対策についても、災害に強いまちづくりを推進することを一つの柱として策定されたところである。
しかしながら、国・地方を通じ財政の環境は、まことに厳しい状況であった。
消防補助金を含む平成八年度の国の予算は、人口の高齢化や国際社会における我が国の責任の増大など今後の社会経済情勢の変化に財政が弾力的に対応していくため、財政の健全化を図り、できるだけ速やかに公債残高が累増しないような財政体質を作り上げていくことが基本的な課題であるという考え方の下に、従来にもまして徹底した歳出の洗い直しに取り組む一方、限られた財源の中で資金の重点的・効率的な配分に努め、質的な充実に配慮することとして編成され、一般会計予算の規模は、七五兆一、〇四九億円(前年度比五・八%増)とされたところである。(第1表参照)
一方、平成八年度の地方財政については、所得税・住民税の制度減税の先行実施に加え、当面の景気に特に配慮して特別減税を継続することとし、平成七年度と同規模の減税を実施することとされたが、これに伴う地方財政への影響については、地方財政運営上支障が生じないよう、住民税減税に伴う減収額については、地方税に代わる財源として、減収補てん債の発行を認め、個々の地方団体の減収額を補てんすること、また、所得税減税に伴う地方交付税の減収額については、交付税及び譲与税配付金特別会計における資金運用部からの借入金により補てんすることとされた。
また、所得税・住民税減税に伴う減収額のほか、地方税の伸び悩み、地方交付税の落ち込み等に加え、景気対策等のための地方債の増発に伴う公債費の累増等から、多額の財源不足額が生じ、平成六年度及び平成七年度に引き続き、大幅な財源不足となったため、一部については、地方交付税の増額措置により対応することとして平成八年度における単年度の措置として国と地方が折半してそれぞれ補てん措置を講じることを制度化するとともに、その残余については、建設地方債の増発により補てんすることとされた。以上の措置を講じることとした結果、平成八年度の地方交付税の総額は一六兆八、四一○億円(前年度比六、八八一億円、四・三%増)となっている。(第2表、第3表参照)
以上のように、厳しい財政環境の中、消防庁としては、消防補助金の確保と、地方交付税をはじめとする地方財政計画への積極的な計上を図ることとした。
本稿においては、昨年一月の阪神・淡路大震災を踏まえた、平成七年度補正予算をはじめとする消防防災関係の財政措置の概要を含め、平成八年度の消防財政の措置状況について述べるとともに、消防財政の抱える問題点についてもふれていきたい。
なお、本文中、意見にわたる部分については、私見であることをお断りする。
二 平成七年度における消防財政措置
(一) 平成七年度第一次補正予算
平成七年度第一次補正予算においては、阪神・淡路大震災の経験を踏まえ、大規模災害時における補助体制・水利等を確保するための所要の消防防災施設等の整備に要する経費の一部に対する補助として、大規模災害対策特別事業を創設し、画像伝送システム及び耐震性貯水糟の施設分約五六億四六百万円、緊急消防援助隊関係の高度救助用資機材等の設備分約二三億九〇百万円を計上したところである。大規模災害対策特別事業は、阪神・淡路大貫災の経験を踏まえ、情報収集・伝達体制の充実・強化、緊急消防援助隊の創設等の広域応援体制の整備、初期消火に要する水利の確保を図るため、予算措置されたもので、通常の消防補助金と異なり、施設・設備を整備することにより、地方公共団体のみならず

 

 

 

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