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◇山中町消防本部(石川)◇

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心のふれあいを大切にする町

”山中や菊は手折らじ湯のにほひ。この地を訪れた松尾芭蕉は山中温泉を有馬、草津と並ぶ扶桑三名湯と讃えた。この他、山中町は漆器産業が盛んな町としても有名で四〇〇年の歴史を持つ。さらには鶴仙渓沿いを中心に緑豊かな自然が広がり、心身ともに旅人を和ませ、心のふれあう町である。
昭和三〇年四月一日に設立、消防長以下九名で発足した当本部も現在では、二八名となり、九二名の消防団員とともに一一、〇〇五人一平成八年二月一日現在一の地域住民の安全を日夜守りつづけている。
♪適切な予防業務の執行
当町は温泉の町でもあるため、旅館・ホテル等の対象物数は四一(平成五年)を数え、万が一これら対象物から出火したならば多数の死傷者が発生することは免れない。しかし、当本部管内の平成七年中の火災件数は二件と平成に移ってから年平均三件以内を維持しており、積極的な防火査察、厳正な適マーク交付審査等、適正な火災予防業務の執行状況が伺われた。
♪地域防災力の向上策
(一)自主防災組織の整備に全力!
当本部では、昨年発生した阪神・淡路大震災を教訓として、自主防災組織の整備・育成に積極的に努めている。自主防災組織づくりにあたっては、現在ある町内会の組織を生かすため、町内自衛消防隊を中心に必要なブロック(一ブロック約五〇世帯)を編成、町内婦人会等による避難誘導班や給食給水班を参入して、組織づくりの基本単位としている。また、町内会消火栓放水競技大会では、毎年五〇チームの自主防災組織が参加し、日頃の訓練成果を競い合っている。
(二)地域ぐるみで防火対策
管内にある防火対象物のうち、独居老人宅や視覚障書者一級宅が約1/4を占めるため、これら災害弱者宅を婦人防火クラブ員などが年一回防災指導に訪れ、防火点検を行う傍ら、災害弱者の現況把握に努め、燐保協助体制の確立をめざしている。
♪ポケベル・受今機で有事即応!
大規模災書が発生した場合、当務員(一二名一三名(公休)=九名)だけでは対応しきれないため、当本部では職員全員にポケベルと受令機を配付して迅速な出動態勢の確保に努めている。
♪年一回の職員希望調査で職務意欲向上・執務環境の整備を図る!
当本部では、年一回職員に対し人事及び執務環境に対するアンケート調査を実施している。「一〇〇%とまではいかないまでも、職員の抱えている希望又は悩み等を少しでも汲み取り、職場改善に役立てていきたい」と石蔵消防長。昨年公布された消防組織法の一部を改正する法律により、各消防本部に消防職員委員会が設置されることになるが、当本部では、現在職員の職務意欲向上と執務環境の整備を図るため、本調査が職場改善の一方策として定着している。
♪消防長訓告
事務室に入るとまず目につくのが、「事をなすのは才能ではなく意欲と努力だ」という署訓。この理由を石蔵消防長に伺ったところ、「高学歴化が進む現代社会の中においても、職務を遂行していくためには基本的に自身の意欲と努力が絶対に必要」と語ってくれた。この言葉を聞いたとき、まさに消防は意欲と努力で自分の道を切り開いていける職場であるということを実感した。
少数精鋭で職務に取り組む個人の職務能力において見てみると、決して専門的ではないものの、警防・予防業務の他、財務、議会関係業務など、その幅広い知識を有しており、日頃から一社会人としての知識の習得や情報収集に努めている。(大谷正明)

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