
見張り
元東京商船大学教授 医学博士(眼科)
橋本進
1. サングラス
サングラスとは元来、強い太陽光から眼を保護するため色ガラスを用いためがねの呼び名である。そして、サングラスが持つべき性能は次のようなものである。
(1)サングラスの透過色は、見る外界の判別に都合が良く、かつ、人の気持ちをなごやかにするものであること。
(2)紫外線を適当に吸収するものであること。
(3)赤外線を適当に吸収するものであること。
わが国では日本工業規格(JIS)で必要な性能が規定されている。
さて、太陽光は種々の光線から成り立ち、いわゆる可視光線の他に、眼に見えない紫外線や赤外線を含んでいる。
紫外線は眼に入ると眼の一番外側の角膜に吸収され、それより奥に入ることはない。したがって、紫外線による眼障害は角膜の炎症に限られるそして角膜に起こる眼炎(電気性眼炎をいう)は眼が大量の紫外線を受けてから4〜5時間後に起こり、眼痛、流涙、結膜の充血が出現し、ときには眼瞼全体が腫れて眼を開けられないほどになる。しかし、多くの場合、治療によって1〜2日で治癒する。
赤外線は可視光線とともに眼の奥へ進み網膜まで入ってそこに視現象の像を結ぶ。可視光線は視覚を生じることになって有用であるが、赤外線は視覚に役立たないのに眼の奥まで入ることになる。これを繰り返していると、その赤外線の作用は蓄積されて水晶体や網膜に障害を与え、最悪の場合には失明に至ることがある。赤外線による災害は蓄積的で、決定的であるといわれるゆえんである。したがって、サングラスとしてはこの紫外線および赤外線を吸収するものが望ましい。
サングラスの透過色については、いま、可視領域(約400nm〜約700nm)を図1.1のように100nmで3部に分けると各部はそれぞれ鮮やかな青、緑および赤の色を呈する。

図1.1 透過光のスペクトル構成
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