僻地医療における大腸癌検診と精査の在り方−大腸サブマリン法導入の検討−
北海道・羅臼町国保病院内科 増子詠一・田面木友久・蒔博文
北海道・羅臼町国保病院放射線科 古川俊英
北海道・羅臼町民生部保健福祉課 小尾和子
北海道・札幌医科大学第4内科 本間久登
要旨
便潜血反応を用いた大腸癌検診が普及しているにも拘わらず、検診陽性者の当院での内視鏡精査受診率は低率であった。この要因を探るため内視鏡経験者および未経験者を対象に住民アンケート調査を実施した。精査敬遠の要因は、多くは検査に伴う苦痛と不便さによるものであり、また都市部大病院指向も無視し得ないものがあった。これを改善するため内視鏡挿入法としてサブマリン法を導入し、また検査とポリペクトミーを同日施行することとした。その結果、検査時の被験者の苦痛の訴えは減少し、当院での精査受診率、年間大腸内視鏡症例数はいずれも増加し、良好な結果が得られた。
僻地医療における大腸精査法として、高齢者を念頭においた安全性、利便性、受容性を有する精査法が必要である。そのために、僻地医療機関の利点を生かしうるサブマリン法の導入は有用と考えられた。
I.緒言
近年大腸癌死亡率の上昇と相まって、便潜血反応を利用した大癌検診が普及している。当町でも平成6年より保健福祉課を中心に積極的に取り組んできた(図1)。検診受診者数が伸びているにも拘わらず、当院での精査受診者数は低率に留まっていた。
これには1)住民が通知を受けたにも拘わらず病院受診していない、2)他医療機関で精査を受けている、の2点が考えられる。いずれの理由にせよ、当院が町立の国保病院であって町民の税負担により地域の医療を担わされている限り望ましい状況とは言えない。
もし病院が大腸精査の能力(capacity)を有しながら、マンパワー、時間、設備などの医療資源(resource)を空費しているなら、病院の健全経営のみならず地域医療に対する責務を全うしているとはいえない。道内において、月形町立病院などで兄られる成功例は必ずしも多くなく、当町や当院の抱える悩みは多少の差はあれ僻地医療に携わる者の共通認識と思われる。今回我々は、この背景にある問題点を明らかにし、解決策を検討したので僻地医療に携わる諸家への提言も含めて報告する。
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