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学会報告

本誌は抄録とし、全文は研究業績年報に掲載します。
終末期における患者の意志とケアの選択治寮への期待を持ち続けた患者への援助
○瀬戸ひとみ 長澤裕子 松島たつ子 西立野研二 日野原重明
はじめに
死の直前まで、自分の意志を持ち続けた患者との関わりを振り返る。
症例
患者:38歳、男性、高校数学教諭
家族:妻、娘(2ヵ月)
病名:胃癌(狭窄型スキルス)BorrIV型、転移不明、
1995年9月診断
病歴:スキルス、西洋医学では治らない。民間療法に期待している。
入院期間:1995年11月20日〜96年3月5日(1ヵ月間の在宅を含む)
経過
針、漢方、灸、コップマッサージなどを行い、薬草茶を2〜3リットル飲水しては鼻カテーテルでドレナージしていた。飲水により出血が見られ、一時、飲水制限を勧めたが、食に対する欲求が強かったため行動を制限せず、見守る姿勢で接した。医師に対しては、IVHおよび漢方、針、遠赤外線を中心にした治療を続けたいという考えを明確に伝えていた。一方では、「子供には、たくましく生きていってほしい。父親がいない分」と、死を意識している様子もあった。その後、医師より病状が進行していると説明され、痛みが出現したがモルヒネは拒否し、退院を決意した。在宅で1ヵ月過ごし、状態悪化のため再入院。医師には否定していたが、家族に対しては痛みを強く訴えていたため、モルヒネの持続皮下注射を開始。再入院後2日目に、妻、友人に囲まれ永眠。
考察ホスピスとは一般に症状緩和をし、苦痛を除き、心を支えるケアと理解されている。今回のケースでは、患者自身が選択した生き方(民間療法、モルヒネの拒否)に、スタッフは初め戸惑いを感じたが、本人の強い意志に共感し、患者の気持ちを見守る姿勢で接した。また、終末期には、正しい病状を伝えることで、患者が家族と過ごすことを決意した。患者とともに歩むことにより、死の間際までその人の生を支えることができると感じた。
1996年11月死の臨床研究会
遺族のケアについて
死別体酸者の声から学んだこと
○森本裕子 鈴木典子 井島彩 松島たつ子 西立野研二 日野原重明
目的
当院では、遺族への精神的ケアの一つとして、死別後1年間、カードの送付や追悼式を行ってきた。それらの遺族へ与える影響についてアンケート調査を行い、検討した。
対象・方法
開院以来、当院に入院した患者の遺族90名。アンケートは、ビリーブメントケアカードや追悼式に対する感想や意見を無記名・自由記載していただく。
結果・考察
アンケート回収率は45.5%。ビリーブメントケアカード、追悼式に対する感想は「よかった」「どちらともいえない」の解答のみで「悪かった」という意見はなかった。回答者は妻が約半数を占め、カードの返信や追悼式への出席も多かった。無記名の返信依頼にもかかわらず、記名解答が約半数を占めた。全体をみるには不十分だが、入院期間や対象から分析すると以下の傾向があった。

 

 

 

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