
モルヒネ6Gというのはそれ自体強力な鎮痛剤なのです。モルヒネ3Gというのは鎮痛剤ではなくてM6Gに抵抗する作用をもっものなのです。モルヒネのリスポンスが一時はよかったのだけどという患者に対してどうしたらよいかということですが、M6Gプロパーを使うか、または代謝経路が異なるほかのオピオイドを使うかということです。こういった逆説的な痛みの場合にはM3GとM6Gの比率が5対1の比率を超えてしまうということがあります。
同じオピオイドの受容体に対して効用するモルヒネとメサドンという二つのオピオイドがあります。最大の吸収度を達成するのにメサドンのほうがオピオイドと比べて吸収が緩慢で3時間かかります、モルヒネは20分です。経口で投与した場合にはメサドンのほうがバイオアベイラビリティが高いということです。代謝経路がメサドンの場合には脱メチルの経路をとるというのが重要なポイントです。現場で実際に効果があるかという質問があると思うのですが、緩和ケアの仲間のうちではメサドンは評判が悪いわけです、半減期が長いということと代謝経路が複雑だというのがその理由です。モルヒネに代わってメサドンを使うのは、もうモルヒネに対する反応がなくなったということが一つの条件です。またはモルヒネの副作用が大きすぎる場合、すなわち朦朧となったり、嘔吐をしたり、あまりないのですがモルヒネにアレルギーを示すという患者もあります。
リバプールのペインセンターでやったことなのですが、モルヒネの一日の経口量の10分の1をメサドンの最初の投与量にするということです。メサドンの最初の投与量を100mgとするわけですけれども、非常に弱っている高齢の場合には半分の50mgにします。次の用量は必要に応じて量を設定します。PRNといっています。しかしモルヒネと違ってメサドンの場合には吸収に時間がかかりますから、少しでも痛みが出たらすぐ次の用量を与えます。投与した用量が完全に吸収されるためには最低3時間の間隔をおくということです。ずいぶん学問的な話だと思って聞いていらっしゃるかもしれませんが、モルヒネと違う代謝経路をもつほかのオピオイドということでいまメサドンの話をしているわけですが、ほかのオピオイドも考えられるということです。
毒性が許容できない状況になったとか、せっかくの治療する窓が閉じられてしまった場合には、他のオピオイドを使ってみる可能性は常に残っているということを覚えていてほしいと思います。
ディスカッション
−先ほどフェンタニルの皮口貼付剤についてお聞きしましたが、効くまでに時間がかかるし、また取っても長く効いているということで、坐薬を作ってそのマイナスの面を変えるということはできないでしょうか。
Andrew フェンタニルパッチを作っているメーカーにいわせると2〜3日に1回ぐらいパッチを取り替えればいいのだから、それだけ作用が長いということを売り物にしているわけですが、裏を返せばそれだけ時間がかかるというデメリットになってしまうわけです。
−コマーシャルレベルでは難しいかもしれませんが、薬剤師が少量作ってどうしても必要な方に提供するというのはできないのでしょうか。
Andrew モルヒネの坐薬はすでにありますね。データをとってみると薬物動態学的には経口で錠剤の形のモルヒネと肛門から与えたものは粘膜との接触がよければ同じような効果があります。
武田 フェンタニルパッチは坐剤にする必要はないと思います。どうしてかというと経皮的なオピオイド剤がほしいという要望に応えて経皮的な製剤が作られたのがフェンタニルだからです。
フェンタニルパッチは日本に10年ほど前に導入の機運がありましたが、その時には製薬会社が薬価が高い薬なのでモルヒネにはかなわないという商売上の理由でやめていますが、フェンタニルパッチは英国ではモルヒネと比べて価格的に高いのでしょうか。
Andrew そうです。
武田 全体のコメントをするようにということですが、まずWHOの3段階のラダーのことです。『癌の痛みからの解放』を読んでいない方がまだおられるということに驚きました。その最大の理由は、医学部の教授とか助教授にこの問題に関心をもつ人が日本では非常に少ないということだと思うのですが、英国ではいかがなのでしょうか。
Andrew 関心は高まりつつあるというのが答えです。
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