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第2回アジア太平洋地域ホスピス連絡協議会の要約と今後の進め方

今回の会議の目的は、アジア太平洋地域にホスピスネットワークをつくり、ホスピスケアの発展と向上を図ることであった。議長にはシンガポールのCynthia Goh博士が、そしてこのネットワークづくりに初期の段階から関わった英国のJoy Brann女史がco−chairとして選出された。まず会議は今後のネットワークづくりに当たってどのような問題、困難、必要があるかについて討議された。
人材と教育面では、ホスピスに関わる人材、とくに看護婦の確保の困難さ、医師に対する緩和ケア概念の教育の必要性、看護婦の基礎的なコミュニケーションコースの必要性、さらに一般の人々に対しては、ホスピスは死にいく場所ではなく、残された時間を意味のあるものにするところであることを教育しなければならない。
薬の問題では多くの医師がモルヒネの使用を躊躇すること、アジアの多くの国々ではコストが高く限られた患者だけしか利用できないという問題がある。緩和ケアの範囲については、緩和ケアはがんコントロールの一つの側面であり、多くの発展途上国では基礎的ながん治療さえまだ十分でないにもかかわらず、緩和ケアに力を注ぐとがん治療の発展が後れるのではないかという不安があること、また、薬は緩和ケアの一つの側面にすぎず、ケアカウンセリングは診断の時点からなされなければならないが、看護婦はカウンセリングに十分な時間がとれずに悩んでいる。
最後の問題としては、安楽死とセデーションについてであるが、安楽死を法的に認める国も出てきたが、ネットワークとしては安楽死に反対の立場を鮮明にすべきであること、また、セデーションについては各国の状況が異なり、今後のさまざまな形態を探究する必要がある。
第2のセッションでは、提起された問題に対する解決策について話し合われた。
緩和ケアの範囲については、その対象はがん患者ではあるが、徐々にエイズ患者も対象になりつつあり、それに伴ってスタッフのトレーニングもエイズ患者のケアをも含める必要がある。
ある人々は緩和ケアを消極的安楽死と混同することがあるが、緩和ケアは患者を意図的に死なせることはしないので安楽死では決してない。しかし患者から死なせてほしいと頼まれることがあるが、その場合他の症状と同様に、患者の死を願う背後の問題をケアしていくことが重要である。
緩和ケア教育の領域では、アジアにはアジアの文化に合った教育カリキュラムが必要である。海外にスタッフをトレーニングのために送るとき、その人選を慎重にすることが必要である。海外で受けたトレーニングで何が自分の国の文化的背景の中でふさわしいかを判断できる人でなければならない。またどのようなトレーニングコースがあり、その目的、費用、対象者、期間等のデータベースも整える必要がある。施設ケアとホームケアについては各国の状況が異なるが、ホスピスおよび緩和ケアが一部の人々だけではなく、できるだけ多くの人々に利用できるようにすることが重要である。
最後のセッションでは、今後のプランについて具体的に検討し、以下のことについて作業を進める。

 

 

 

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