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QOLをふまえての高齢者に対する考え方*1

 

Robert Kastenbaum,ph.D.*2

 

多様なバックグラウンドから共通の理解へ

私の日本訪問は初めてですので、みなさまからお聞きしたり、学んだりしなければなりません。しかし、お招きいただいた上はまず、私がお話ししなければなりません。私は、自分の知っていることで、主としてアメリカ合衆国の長い人生の最後を迎えている高齢者の状態についてお話しいたします。私よりみなさまのほうがアメリカ人の高齢化と死の体験と日本の状況とがどのように似ていてどのように違うかについては、よく判断できる立場にあるのではないでしょうか。
ご存じのとおり、アメリカは、多文化、他人種、多国籍によって構成されている国です。また、地域差と教育差のギャップのある国でもあります。私たちはまた、専門的医療従事者、行政責任者、研究者、そして教育者のランク内でも分かれています。それぞれのグループの人々は、それぞれ独自の物事の見方とやり方をもち、そしてストレスの多い状況の中で、独自の果たすべき責任をもっています。さらに、違う年代に属する人々はそれぞれの人生経験の違いから、さまざまな出来事に対しても違う解釈の仕方をもっています。
この多様性は、互いのコミュニケーションを十分に図るのを困難にします。同じ職業内でさえ、たとえば医療ですが、私たちは常に互いに注意深く聞くことをしないし、そしてすべての人々が私たちの現実と同じだと思い込んでしまいやすいのです。専門化することは、もちろんそのよさがありますが、相互信頼と理解を確立するためには害となります。もし医療従事者として私たちが自分たちの間でコミュニケートしなければ、一般の人々に首尾一貫したバランスのとれたサービスを提供することに失敗するでしょう。私はみなさまが理解できるよう努力しますので、みなさまも私を理解してくださるようお願いします。そうすれば私たちの個人の背景や、文化的遺産、あるいは専門的なトレーニング等の違いを越えて理解し合うことができるでしょう。それではここにいるみなさまが互いにQOLについて看護婦とか臨床心理学者とか哲学者としてではなく、それに関心のある人間として考えられるよう助け合いましょう。

 

*1 What does Ouality of Life Mean to Elderly People?
*2 Professor of Department of Communication Arizona State University

 

 

 

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