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いかに合併症を防ぐか

こうして治療することの目的は、合併症を予防することであるわけです。いまのようなインスリンを一日4回打つという治療は、この20年来行われてきた方法です。なお依然として一日1、2回の注射ですましているインスリン依存型もなくはないのですが、それは困るのです。なぜ困るかというと、一日1、2回の注射でインスリン依存型、すなわち一日のインスリン必要量が20単位以上になっている人たちを治療していると、いいコントロールができないからです。そしていいコントロールができないと、合併症がすすんでしまうということがあるからです、これは一日に4回の注射、あるいはCSII、ポンプを使った治療をした場合と、一日1、2回の注射で尿糖だけを見て血糖を測らなかったという例とを比較した場合、網膜症のすすみ方は前者の場合には発現予防で76%、すでに見られていた網膜症の進展予防で54%を示し、従来法と比較して有意にその効果が高かったということがわかっています。これがアメリカ、カナダで行われたDCCTという研究成績です。この研究は網膜症、腎症、神経障害、そのいずれに対しても強化インスリン療法が有用であることを明らかにしました。
この研究を行うために定められた血糖コントロールの努力目標というのは、空腹時血糖を120以下にし、食後を180以下にする、そしてHbAlcを6%以下にするということでした。これが強化インスリン療法を行っ
て出た結果なのです。現実には血糖の日内平均が142で、HbAlcは7%という成績で先ほどのような合併症の発現ないしは進展予防がなされたのです。しかし、このレベルをすべてのインスリン依存型で得ることは困難なことです。そこで現実的には、やはりHbAlcが7%以下、日内変動の平均で140、空腹時でいえば200以下ということになってしまいま

 

 

 

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