日本財団 図書館


 

ない人々にとっては、まことに便利なのですが、経済的裏付けのない人々にはますます暮らしにくい世の中になってしまっているような気がします。
本人確認のため身分証明書を求められることがありますが、たいていは、運転免許証かクレジットカード、あるいは学生証やパスポート、健康保険証などです。保険証は家族全員に1枚なので、つねに自分が携帯するわけにはいきません。その他のものはどれも、ある程度の経済力がないと入手できないものばかり。ですから本人確認だけでなく、同時に経済的保証の確認もやっているわけです。そして、この経済的保証がこの社会では、その人の存在価値の証明でもあるわけです。それらを持っていない人、たとえぱクレジットカードを入手できない人は経済的存在意義も、社会的存在価値も低いと、気軽に切り捨てられかねない社会をわたしたちは築き上げたのです。

 

人格の切り売り生活

そんな社会では、金儲けがあたかも人生最大の関心事であるかのような錯覚が起こり、一攫千金を狙うにしろ、エリート社員になるにしろ、あるいはスポーツ選手にしろ、どのくらいの収人がある、文字通り「金持ち」かが社会的エラさの指標のように思われ、しまいには贈収賄で役人に金の延べ板が受け渡しされる情けなさです。
それは論外としても、まっとうに働いて報酬を得る場合でも、お金を入手するには、引き換えになにかを売り渡す必要があります(なにも渡さずお金だけいただくのはサギかドロボーです)。自分の時間であれ、労働力であれ、技術、センス、あるいは作品、製

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION