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持ち寄って、共に生きていることを確かめあい、日常のなかで重荷を担いあい、喜びをわかちあおう。こころの触れ合う共同体としての社会を取り戻そう、という希望が、そこに感じられます。
そんなふうにボランティアヘの関心が高まっている昨今ではありますが、その本来のありかたや、ボランティア活動の土台ともいえる「こころ」については、まだはっきりとした共通認識を得るまでにはいたっていないようです。そのあたりを、これから一緒に考えてみたいと思います。

 

“行政”と“ボランティア”

ボランティアの活動範囲は、いまや手の届く身近なところから、地球の裏側まで。たいへんな広がりをもってきました。
国連にしても、非政府組織(NGO)の積極的参与なしには役割を全うすることは不可能でしょう。国境や政治的立場を越えての人道的活動には、民間ボランティアにしか果たせない役割が数多くあります。ペルーの人質事件にしても、国際赤十字と教会の司教のボランタリーな参与なしに、解放の交渉を重ねることは不可能でした。行政とボランティアとがバランスのとれたパートナーシップを発揮することは、平和な世界を築くのに不可欠だとわかります。
行政の役割が“鳥の目”として全体状況を把握することに重点があるとすれば、ボランティアはいわば“アリの目”。触覚で直に一つひとつ触れながらきめ細かく、こころのこもった活動を続けていくことが得意です。そのうえ、ボランティアは、個人の意思と行動力に支えられたフットワークのよさ、状況への対応の柔軟さをも兼ね備えています。

 

 

 

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