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るはずです。アメリカでは病院のベッドは激減してきました。ナースもいままでは医師の下で介助的な看護をやってきましたが、患者のケアにはだんだん介護士やヘルパー、患者の家族までが参与するようになってきます。診療録(カルテ)も医師・ナースのものと患者のものが同一のものになり、病歴は患者自身が持つ時代になります。こういう時代のすう勢に十分対応できるナースであってほしいと思います。

 

静かなお訣れ

さて、いよいよ最後の時がきます。どのように死を迎えてもらったらいいのでしょうか。
タ一ミナル・パフォーマンスこの言葉は、芝居の最後の幕引きのときの演出にならって私がつくった言葉です。「いま心臓が止まりました、○時○分でした」と告げますと、たいていの家族は泣き出します。私はそうするのではなく、「いよいよ血圧が下がって聴診器では測れなくなりました」と言います。そして、呼吸が下顎型になり始めると、「患者さんの知覚はほとんどありません。痛みも呼吸困難も感じておられませんから、酸素の管は外しましょう」と言い、「まだ息をされている闇にお別れをしてください」と申します。こういうときには家族はワッと激しく泣き出したりはしません。この時点で、患者さんの近しい方々が順々に病人の唇を濡らしていく間に、患者さんの呼吸はだんだんと間遠になってきます。それからでも聴診器では心臓の音が聞こえますし、心電図も波型を描きます。しかしそれもいずれは消失します。「お顔をご覧なさい。平和なお顔でしょう」と言いますと、家族や友人は、あの長い苦しみから解放されてよかったとい

 

 

 

 

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