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ザッと聴こえる。それが聴こえると大動脈弁閉鎖不全症か、甲状腺機能亢進症を疑ってよいのです。喉が腫れていなくてもわかります。その人を体重計に乗せると針がパッパッと動きます。それは甲状腺ホルモンで心臓が強く血管拍出し、ジェットの理論で体が下がるからです。そのような患者の心臓を聴診して拡張期性雑音があれば弁膜症(大動脈弁閉鎖不全)ですし、それがなければ甲状腺機能亢進症です。それを見るために、私はいつもゆっくりと血圧計の目盛りを下げていきます。ところで、血管音がどこまで聞こえるか、あるいはどの時点で血圧測定は触診法だけしかできなくなるか、それらを記録して亡くなった時間から逆算してそれを10例、20例と集めたら、立派な看護研究ができるのではないでしょうか。

死がそこに見えていても、希望を与えなければなりません。今日を生きる希望、明日を迎える希望を与える。ターミナルの人にも翌日の朝日がまた見られるかもしれない、かわいがっているペットに会えるかもわからないというのが生へのひとつの望みともなるのです。そういうことを考えながら、私たちは患者に死が近いというインフォームド・コンセントを与えなければらないのです。

 

ターミナル・パフォーマンス

ターミナルのときに愛する人が傍らにいないと、それまでこころをこめてサービスをしても無に帰することがあります。家族がお別れをするときには、心臓が止まってからお別れをするのではなく、まだ息をして意識が弱くなったときに、いまがまだ生きているときのお別れですよ、泣かないでお別れをしてくださいと言

 

 

 

 

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