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いうアプローチの仕方をどう演出するかをナースはよく知っています。その情報を医師はもらわなければいけないのです。ナースが直接話すのではなくても、それと同じことを医師が言うのです。少なくとも医師への情報はナースから上げられなくてはならないのです。病気の診断は医師ができても、人間の診断となれば医師には明らかに情報が不足しているからです。

 

死の時をどう見極めるか

ターミナルが近づいてくると、いつごろ死を迎えるかを見極めることが必要になります。というのは、ホスピスや緩和ケア病棟で上手に世話をしても、死のタイミングが合わないと、いちばん大切な人が死の時に間に合わないことがある、あるいは逆に早く呼びすぎたということもある。あと1ヵ月でしょうと言った医師にとっては、やはり1ヵ月で亡くなってほしいと心の隅では思っている。もちろん、それが外れるように一日も長いいのちを願う人もいます。ふつうは、それが愛する者への気持ちです。医師の中には、そのように一日も長らえることを願う天使のこころと、自分の診断通りに死んでほしいという騙りもった悪魔が共存しているのです。ホスピス・ケアにおいては、天使のこころでケアをしないと失敗するのです。何カ月、何週間がということは言えないことなのです。何かの合併症がおこればあっという間に亡くなることもある。それに家族とのタイミングを合わせるには、悪くなったときのバイタルサインの読み方が大切なのです。いつまで血圧は測れるか、血管音はいつから聞こえなくなるか、ことに呼吸は本当の末期を現します。吐く息はあるのだけど、吸う息がない。ふつうは十分に吐きますから陰圧になり、吸わなくても自然

 

 

 

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