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インフォームド・コンセントのアート

また、ホスピス・ケアにおいては、インフォームド・コンセントはだれがやればいいかというのも非常に大きな問題です。医師がすべきだという人も多いでしょう。私も長い間そう思ってきました。ところが、5年ほど前にあるケースに遭遇してからそれは必ずしも正しいことではないということがわかりました。インフォームド・コンセントもナースが関与したほうがいいという場合もおそらくあるでしょう。
私の経験したのは、妻が夫に告げたというケースです。知り合いの牧師が末期の肺がんで、ある病院に入院しました。主治医に聞くと、当人に病名などは話していないと言います。胃がんはこのごろ当人に告げるようになりましたが、肺がんはまだまだ言わない例が多い。手術のできる肺がんが少ないからです。しかし、私は担当の医師に、この患者は牧師で、今度のクリスマスが最後の説教のチャンスと思われるので、その席で信者の方とお別れができるように病気のことを言ってあげたほうがいいのではないかと説得しました。
医師は、患者さんの枕元に行って手術ができないほどに進行した肺がんの見通しを話したそうです。その後の医師の報告では、あんなに静かに死を受け入れた人はいない、さすがに牧師だということでした。それを聞いて、私も告知を勧めてよかったと思っていました。
亡くなられた1年後に追悼会がありました。それに合わせて記念誌をつくったからと私にも奥さんから手紙と一緒にその本が届けられました。その手紙には、「クリスマスの礼拝には、座ったままでしたが説教ができました。明日、主治医が主人に病気の告

 

 

 

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