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白血病は治るようになりましたが、おとなは化学療法も効きませんから亡くなってしまいます。この方は、輸血という対症療法をしていましたが、死を覚悟して、子供に残したいといってワープロで自叙伝を書き始めました。書き上げたところで、輸血はやめてくださいといわれました。彼女は死ぬまでチアノーゼはなかったのです。死ぬ前の日の血液検査でヘモグロビンは2gでした。14gがふつうですから、7分の1のヘモグロビンではいくら酸素吸入をやっても脳や心臓に酸素はいきません。組織の酸素がひどく不足しているのです。ヘモグロビンがないから、還元ヘモグロビンが黒い血になってチアノーゼになるのですが、6g以下の人はチアノーゼ状態になってもチアノーゼは出ないのです。
つまり、貧血があればチアノーゼは出ないのですから、それで安心はできないということです。驚くべきことにこの方は2gのヘモグロビンで私と亡くなる前の日に40分間話をしました。生きることの意義、生かされている自分の反省、子供へ遺す言葉などを語り合い、そして出来上がった自叙伝にサインをして私に下さいました。金曜に死にたい。なぜなら、土・日で通夜と葬式ができるので迷惑をかけないですむ。自分の葬式は仏教式でにぎやかな音楽をかけてほしいなどとも言われました。そのあとお姉さんに、「ひょっとしたら私はもっと生きられるかもしれないね」と言ったそうです。ヘモグロビンが2gなのに脳がはたらくというのはすごい奇跡です。しかし、24時間後には全然苦しまないで死んでいかれました。

 

体温、脈拍、呼吸

出血などショックをおこすタ一ミナルでは体温が下がります。

 

 

 

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