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ように見えても、再発し症状が悪くなると、今度はどんな化学療法も効かない、手術もできない状態に陥ります。それから先はターミナルが始まるのです。そこには、かってあった生きるための医学や看護とはまったく様相の違う死のための医学と看護があって然るべきだと思われます。これがみなさんが勉強しなくてはならない新しい分野の医学と看護なのです。これこそ私たちの新しい研究テーマだといいたいのです。
生きるための医学や看護というのは、延命や救命の医学、あるいは予防のための医学です。しかし、死の医学や看護というのは、いのちの質のケアを目指し、患者さんの冥途への旅路に付き添う船頭としてのアートとでもいえましょうか。

 

ターミナル・ケアの具備すべき条件

私はここで、ターミナル・ケアの概念をもう一度はっきりさせたいと思います。
ターミナル・ケアというのは、患者によりよい最後の環境を提供する技(わざ)です。環境には物理的な環境、すなわち私たちがつくった独立型ホスピス「ピースハウス」のように富士山を望み、緑の芝生と四季の花々に囲まれた中に建ち、午後3時にはみなでお茶の席に連なるというような環境を与えられれば何よりです。
それと同時に、ターミナルの患者にはよい内的環境、すなわち気楽に話せるこころを許し合える人をかたわらにおくべきです。がんの末期の患者には、話すことが好きな人より、よい聞き手になる人に側にいてほしいと思います。上手にこころの内を聞くということはカウンセリングのコツでもあります。患者のこころの

 

 

 

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