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中にはなかったのです。予防医学、治療医学、延命医学の3つはゴール近くまで進みましたが、第4の終末期の医学におけるQOLはどこまで達成されたのでしょうか。
1967年、イギリスのシシリー・ソンダース医師−最初は看護婦でしたが、その後ソーシャルワーカーになり、さらに医師になった方です−が、治らないがんをもった患者さんのケアをすることになったとき、自分はこの人のために何ができるかということを考えました。そして考えついたことは、病気は治らないとしても苦しみはとってあげて、少なくともいのちが許されている間は何日か何週間がでも、こころの安さが与えられるということに気づき、ロンドン郊外に世界最初のホスピス、セント・クリストファース・ホスピスを創設したのです。それを契機として、医学も大きな転換期を迎えました。
その患者の病気を治すことはできなくても、いのちの質を高め、深めることができるようなケアを医師やナースは提供すべきではないかということが間われるようになったのです。QOLはいまや医学や看護の中の大切な要素であるということに私たち医療従事者はようやく気づくようになりました。

 

ターミナル・ケアとは

1967年のホスピス誕生以来、ターミナル・ケアが医学や看護の研究対象になってきました。
患者が重い病気にかかってだんだん悪くなる場合でも、ICUやCCUなどで薬や手術によって危険な状態を脱しうるのであれば、それは生きるための医学や看護です。ところが、この危機的状態を切り抜けることができず、たとえ一時的にはがんは治った

 

 

 

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