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理論がある。そして一つの音と他の音とがハーモニーすると、その音波が和音を構成し、えもいわれぬ調べを奏でます。ハーモニーを組み立てるための理論があり、その音楽理論によって作曲がなされます。また、その曲を演奏するには技術(テクノロジー)が必要です。正確に音階を出す、そしてよい音を出すというテクノロジーが要求されます。フルートでもバイオリンでも、ただ音階を正しく出すだけでなく、音色をよくすることのテクニックが必要です。年に1〜2回の演奏会でこのテクニックを最高度に発揮するために、演奏家は毎日何時間ものプラクティスに打ち込むのです。そして演奏するにあたっては、このテクニック以外にも、作曲家のモチーフやムードを再現するための感性が要求されます。そのためには作曲家についてよく知り、作曲家の意図を解釈し、それを演奏家として表現する、つまりそれらすべてがアートのパフォーマンスには必須とされます。
医学や看護では、病む人のからだとこころにタッチする、その技を私たちは医学や看護でのアートというわけです。これにも日々の激しい訓練がなければ立派な実演はできません。

 

終末期医療とQOL

次に、医学のもつゴールについて話しましょう。医学には4つのゴールがあります。第1は予防医学、第2は治療医学、第3は延命医学です。これらは現代医学では相当発達しています。しかし、治らないということがはっきりし、命の許される期間がだんだん残り少なくなってきた患者さんに対しては、生きている間にどのようにその人の生活の質(クオリティ・オブ・ライフ)を高めることができるかということを考えることは、これまでの医学の

 

 

 

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