日本財団 図書館


 

在宅における死
全国的にみますと現在、老衰で亡くなる方のうち6割くらいは自宅で死を迎えているようですが、東京などの大都会では病気のいかんにかかわらず9割以上もの人が病院で亡くなっています。しかしこれからは、老衰やあるいは末期にあるがん患者でも痛みさえ自宅でコントロールできれば、自分の家で死を迎える人が少しずつふえてくるのではないでしょうか。現にアメリカや北欧では、末期がん患者や難治性の病気をもつ人は症状がひどいときにはホスピスに入院してきますが、病状が定まればそのうちのかなりの人が自宅に戻り、自宅で最後を迎える人がふえてきているようです。タ一ミナル(terminal)という英語は、日本でいうような“終末”という意味ではなく“出発する”という意味をもっています。欧米のような概念を含んだ言葉としてタ一ミナルという語を用いていれば、必ずしも自宅で死を迎えることが悲劇的な意味でのみとらえるのではないという、死に関する発想の転換を試みることも可能ですし、そういうことも必要なのではないかと思います。
広範にわたる在宅医療
私は1993年にアメリカ・シアトル市にある大規模な訪問看護センターを訪れました。ホスピス・オブ・シアトルという施設です。日本でホスピスというと、主としてがんの末期患者を扱っており、最近はエイズも含めるようになりましたが、そのような治らない病気の患者を扱う施設と定義されています。ところが、ホスピス・オブ・シアトルは、もはやがんやエイズ患者に限るのではなく、

 

 

 

目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION