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うのか、ユーモアがそこにあるわけです。これが必要なのです。
木を見て森を見ない。どうしてもそうなります。木を見ながら、やはり森を自分の視野にきちんと納めるということが、医療、福祉のプロでは必要なのです。

 

井深八重さんにみる“謙虚”さ

 

私には自分の人生を狂わせた一人の女性がおります。看護婦さんです。私は本当は実業家になりたかったのですが、その看護婦さんに出会って、福祉の世界に入る決心をしたのです。井深八重という方でした。5月15日に亡くなられ、私は今週も静岡まで墓参りに行ってきました。次かしたことはありません。今年で7回目です。私の生涯で最も尊敬する女性です。
この井深さんと出会って、私は、その看護婦の姿に打たれて、福祉の道に入って井深さんのあとをついて行こうという気持ちにさせられたのですが、その井深さんとテレビで対談をしました。私が引き出し役、聞き役です。私もおしゃべりなので、井深さんに負けずにいろいろしゃべっているのですが、本当のところは聞き手ということでした。半ば近くなって、井深さんの後ろで井深さんにわからないように、ディレクターが紙に書いて私に指示をしたのです。出演の途中でディレクターが指示するということはありえない。私はそんな経験はないのです。見ますと、「ご本人の話を引き出して下さい」と2行で書いてありました(笑い)。私は内心ムカッとしました。「何おっしゃいますか!みごとに引き出してるでしょう」と言いたいのです。でもテレビに映っていますから、ニコッと笑いながら、それを無視しました。
数分たったら、ディレクターがまた同じ紙を出したのです。今度はご丁寧に、“ご本人”という上に赤で二重丸がしてあります。

 

 

 

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