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一人を中心にサービスが展開される

 

ニュージーランドのウェリントンの郊外のある農村地帯に行ったことがあります。そこに病院の訪問看護婦とメディカルケースワーカーに連れられて、4軒ほど高齢者の世帯を訪問しました。最初に伺った家が87歳の男性の独り暮らしでした。行きましたら、片手に杖をつきながら自分で草取りをしているところでした。その家は1キロ四方隣がないのです。畑と林と森だけでした。家は一切見えません。大きな家でしたがその家だけがポツンと1軒建っているだけです。
私は、その方に「さびしくありませんか」と聞いたのです。そうしたら、その老人が「見なさい。馬が1頭、犬が1匹、ネコが2匹。いい友達だよ、」まずこう言ってニコッと笑いました。「近所の若者たちがここに来て座り込んで帰らないんだ。迷惑しとるよ」と言って、私にウインクしました。実にユーモアのある方で、私はこのユーモアが独り暮らしを可能にしているのかとも思ったほどです。
この方がこう言われるのです。「わたしの父親はこの家で生まれ、この家で死んだ。私はこの家で生まれ、この家で育ち、働き、村のために尽くした。わしはここで死ぬ」。断言をしたのです。この方のために、病院が週一回、訪問看護婦とケースワーカーを送っております。月に一度医師が往診に行きます。そしてホームヘルパーが2人通ってきています。伺うと、皆さん近所の方で、老人に小さいときに世話になったという話でした。その方が交替で詰めておられる。そしてそこに一日2食の食事が配食されていました。配食をしているのはライオンズクラブの方でした。
私はその晩ライオンズクラブに招かれて皆さんにお目にかかったのですが、皮肉を交えてですがライオンズの方がこう言われた

 

 

 

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