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このとき取り残される子供が出ました。それが障害児です。傷害を持った子供は工場で働けないだけでなく、学校に入れなかったのです。障害児が学校に入れるようになったのは昭和54年からで、戦後34年という長い時間を必要としたことを忘れることはできません。障害児は生産性を持たないからです。日本の社会が必要とした労働能力を持っていないからです。ここに私どもの社会のひずみがあります。

 

人間の弱さへの共感

 

全国学校保健研究協議大会が開かれ、嘱託医、歯科医、薬剤師、養護教員、校長先生方が4,000名集まりました。そのとき掲げた主題は、「強く逞しく生き抜く児童の育成」というものでした。
「立てばグニャリ、座れば居眠り、走ればポキリ」という言葉がささやかれました。朝礼で10分立っていられない子供の体を心配した言葉です、子供に強くあってほしい、逞しく生き抜いてほしいという親や先生の願いがそのまま映された主題でありました。強く逞しく生き抜くとはどういうことなのか。一体その根拠はどこにあるのか。人間の強さ、弱さは一体何か。それが今日の教育には欠如しております。
その席で、ある進学高校の先生がこういう報告をされました。クラスの中で一人の生徒が病気になって長欠になる。それをクラスの同級生に報告をしたところ、みんながニヤッと笑い、後ろにいる子が「これで今度はおれは一番だ」とつぶやいたというのです。友達の病気を悲しむのではなく喜ぶのです。なぜなら大学受験のライバルが一人落ちたからです。友達が病気になるのを喜ばなければならない状況に、今日私どもは子供たちを置いているのです。こうした社会では、人をはねのけ、病人の上に立って、一

 

 

 

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